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ホーム >  コラム >  week31 心理学と警察との協力―学官の連携の一例として

week31 心理学と警察との協力―学官の連携の一例として


 近年、警察の業務活動に、心理学者が連携・協力し、科学的知見が警察の活動に取り入れられていく動向があります。その例として、犯罪の被害児童にとって負担が少なく、かつ児童からより正確な聞き取りを可能にするための手法である司法面接という面接技法や、被疑者の可能性がある被面接者に取調べをする際の、証言の誘導や虚偽の証言の発生を防ぐための取調べ技法の開発や普及活動などが挙げられます。
 これまでなんらかの被害を受けた児童が被害を申告する場合、何度も同じ質問をされることや、誘導的な質問を受けることが少なくなく、その証言の信ぴょう性が問題となることがありました。また、さらにこうした質問にさらされることが、いわゆる「二次被害」を引き起こしてしまい、児童の精神的健康を損ねることにつながっていたという問題がありました。司法面接という方法は、こうした問題を可能なかぎり予防するために発達心理学や認知心理学の知見を踏まえて開発された面接技法です。現在、心理学者が、被害児童に対応することの多い警察官や児童相談所職員等にこの面接技法の研修活動を行っています。
 また、これまで、警察官による取調べにおいて、被疑者とされた人による、虚偽あるいは不正確な自白証言に基づいて、いわゆる「冤罪」が生じていることがありました。いかにこうした虚偽証言を防ぎ正確な証言を得るのかという対策が、取調べの録音録画がなされ、裁判員裁判制度が運用されている現代では、ますます求められているのです。近年心理学的見地から、取調官に迎合した証言が誘発されやすい要因や、虚偽証言が生じやすい要因が研究され、こうした要因に配慮した取調べの面接技法が練成され検証されてきており、こうした知見は、実際に取調べにあたる警察官に還元されています。
 このような警察職員等と連携する心理学者は、実は臨床実務の経験をもつ人があたることが多いのです。たとえば教育現場・福祉現場では、被害に遭った児童・知的・発達障害者等に対応することがあり、こうした経験のある実務家が研修を積み、その実務と研究を融合した貴重な知見を後進や現場職員に研修指導するということになります。実務経験を研究や理論によって裏打ちすることで、説得力がより増すことになりますが、実務家教員の特色はこうした連携につながっています。

【文責:神谷栄治(中京大学心理学部 教授)】

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