グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


ホーム >  コラム >  month23 一番はじめに困ること

month23 一番はじめに困ること


災害時のトイレの使用方法(掲示例)

 東日本大震災から15年の節目に改めて当時の状況を見直しております。私は当時海外におり、CNNニュースがすべて日本のニュースに切り替わり、田畑をみるみる覆い隠す津波や、石油コンビナートに迫る火災の映像が繰り返し流れるのをみて、どうか特撮であって欲しいと願ったものです。高齢の男性が、妻と逃げた様子をはじめは笑顔で語っていたのに、突然顔をクシャクシャにして、津波で妻を見失ったことを辛そうに語る様子は、遠く離れた地にいた私でも胸が苦しくなりました。以来、人々は実際には何を考え、どう行動したのかを考えないではいられなくなりました。
 被災しておそらく最初に困ったのは、やはり排泄だったでしょう。高知県で関心No.1の南海トラフ巨大地震では、大きな揺れに続いて大津波が襲ってきます。高知県は、県民意識調査1)で「揺れが収まったらまず避難」と回答した割合が70%前後にとどまっていることを憂慮しています。津波の第一波到達までの予想時間は数分以内のこともある2)ためです。気象庁は「地震が発生してから約3分を目標に、大津波警報、津波警報または津波注意報」を発表します3)。つまり、警報が出てから避難をはじめても、その時点ですでに数分ロスしていることになるわけです。ですから、逃げる前に「ちょっとトイレに行ってから」なんて猶予はないのかもしれないのです。
 では、どうしたらいいのでしょうか。数分で津波が到達するのは一部の沿岸地域のみですから、とりあえず安全な場所まで避難して、そこで用を足すのがよいのでしょう。途中で失敗したとしても、やはり命には代えられません。
 その代わり、避難先ではすぐに使えるトイレや、着替えの備蓄を整備したいものです。今はTKB48(注)といって、基本的な欲求の充足の重要性は理解されつつあり、様々なトイレ用品が開発されています。高知県立大学でも災害用トイレグッズは各種取り揃えました。しかし、わざわざ仮設トイレに行かなくてもいいようにと、組み立て便器を居住エリアに設置するのは、使用中の音漏れ、においが気になります。簡易便器の上にかぶせる小型テントは、幅数センチの入り口を乗り越える必要があったり、中も薄暗く、かといって照明をつけたら外に丸見えになったりします。排泄後に汚物を自動で密閉する組み立て便器はやたら重量があって設置が大変です。結局、高知県立大学では、災害時は既存の設備を利用する方針に切りかえ、今年度の災害対策取り組み成果の一つとなりました。

(注)防災における「TKB48」とは、災害発生から48時間以内に、避難所へT(トイレ)、K(キッチン/温かい食事)、B(ベッド/パーソナルスペース)を整備し、災害関連死を防ぐための取組みです。

1) 高知県危機管理部南海トラフ地震対策課.令和6年度実施地震・津波県民意識調査.令和7年3月.2025
2) 高知県.6-3津波浸水予測時間図(浸水深30cm)10 高知市. https://www.pref.kochi.lg.jp/_files/00011914/84001.pdf (最終アクセス2026年2月17日)
3) 気象庁.津波警報・周囲方、津波情報、津波予報について.
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/joho/tsunamiinfo.html(最終アクセス2026年2月17日)

【文責:高知県立大学看護学部 教授 木下真里】
Page Top