month19 災害時の保健医療活動の課題

【災害用段ボールベッドの例】
どうやって組み立て
どうやってよじ登るのか
私は高知県立大学看護学部で災害看護学を教えている。災害看護とは何か、といわれれば、最近では「災害時に行う看護ケアのこと。専門分野ごとに内容は異なるが、すべての看護職があらかじめ備えておくべき技術である。」と答えている。
「災害看護=緊急医療」のイメージにあこがれて本学に入学してくる学生は少なくないが、実際は災害看護という専門分野が確立しているわけではない。DMAT登録者であっても、普段は小児科、精神科、救急外来など様々な部署で勤務し、いざ災害が発生した時に出動するスタイルが基本である。災害はいつ、どこで起こるかわからないものであり、災害が起こった時に「災害看護の専門家」がすぐに到着するわけではない。したがって、災害が起こった時には、看護のどの専門分野でも、まずはその場での対応が求められるのである。
災害看護に関する科目は、例年1回生後期に始まる。初回の授業で私から「災害看護という専門分野はない」という事実を告げられた時の学生の反応は、納得がいかないような表情の学生もいるが、抵抗なく受け入れて自分の個性を生かした役割について真剣に考え始める学生もいる。
このようなことだから、災害時の看護に興味を持つ学生は、救急外来や外科系など急性期看護学の分野にばかり進むことになるため、さまざまな専門分野で災害時の看護ケアについてあらかじめ備えておく体制、という私の理想は、なかなか実現しそうにない。
災害発生時にどれだけ早く被災地に行き、活動を開始するかについてはかなり成果が上がっていると思うが、一方で、もう少し持続可能性のある支援に移行しないか、という議論が始まらないことは、課題だと感じている。例えば、避難スペース一人当たり3.5㎡が必要なのかとか、他の素材に比べて段ボールベッドや衝立が本当に優れているのか、日本の環境で検証することなく、スフィア基準や政府ガイドラインに付き従っている現状を見るにつけ、こうしたことを科学的に検証するのは本来看護学の責任だと思うが、これが一向に進まないことに、かなり責任を感じてはいる。
【文責:高知県立大学】
「災害看護=緊急医療」のイメージにあこがれて本学に入学してくる学生は少なくないが、実際は災害看護という専門分野が確立しているわけではない。DMAT登録者であっても、普段は小児科、精神科、救急外来など様々な部署で勤務し、いざ災害が発生した時に出動するスタイルが基本である。災害はいつ、どこで起こるかわからないものであり、災害が起こった時に「災害看護の専門家」がすぐに到着するわけではない。したがって、災害が起こった時には、看護のどの専門分野でも、まずはその場での対応が求められるのである。
災害看護に関する科目は、例年1回生後期に始まる。初回の授業で私から「災害看護という専門分野はない」という事実を告げられた時の学生の反応は、納得がいかないような表情の学生もいるが、抵抗なく受け入れて自分の個性を生かした役割について真剣に考え始める学生もいる。
このようなことだから、災害時の看護に興味を持つ学生は、救急外来や外科系など急性期看護学の分野にばかり進むことになるため、さまざまな専門分野で災害時の看護ケアについてあらかじめ備えておく体制、という私の理想は、なかなか実現しそうにない。
災害発生時にどれだけ早く被災地に行き、活動を開始するかについてはかなり成果が上がっていると思うが、一方で、もう少し持続可能性のある支援に移行しないか、という議論が始まらないことは、課題だと感じている。例えば、避難スペース一人当たり3.5㎡が必要なのかとか、他の素材に比べて段ボールベッドや衝立が本当に優れているのか、日本の環境で検証することなく、スフィア基準や政府ガイドラインに付き従っている現状を見るにつけ、こうしたことを科学的に検証するのは本来看護学の責任だと思うが、これが一向に進まないことに、かなり責任を感じてはいる。
【文責:高知県立大学】