month18 雲の上の診療所での実務家教員の活動
今年も岐阜大学医学部の「奥穂高岳夏山診療所」での診療活動に岐阜薬科大学の実務家教員と薬学生が参加しました。この山岳診療所は、登山者救護のため、1958年から岐⾩⼤学医学部が開設しており、⽇本3位で岐阜県最高峰の北アルプス・奥穂⾼岳(3190メートル)の⼭頂直下にある穂⾼岳⼭荘に併設しています。岐阜大学の医師や看護師、医学生や看護学生だけでなく、岐⾩薬科⼤学の実務家教員と薬学⽣が参加しています。同様の山岳診療所の多くは北アルプスを中心に大学医学部などが運営しており登山者らの救護にあたっております。
今年は7⽉31⽇〜8⽉17⽇の計18⽇間開設され、医師、看護師、薬剤師と学⽣の計6⼈で⼀つの班をつくり、6班で3⽇間ずつ順番に運営を担いました。新型コロナウイルス感染症のまん延に伴い活動を休止しておりましたが、2年前より規模を縮小して再開し、今年度は昨年度より期間を延長し、だんだんとコロナ前の状況に近づいてきました。筆者と本学の薬学生2名は医師1名と医学生2名とともに8⽉15〜17⽇の運営を担当する最終班のメンバーとして参加しました。今回参加の医師と薬剤師はともに実務家の大学教授です。8月13⽇早朝に岐⾩市を⾞で出発。平湯温泉のアカンダナ駐車場からバスに乗り換え、上⾼地(⻑野県松本市)からは徒歩で2日かけて診療所に到着しました。
今年は7⽉31⽇〜8⽉17⽇の計18⽇間開設され、医師、看護師、薬剤師と学⽣の計6⼈で⼀つの班をつくり、6班で3⽇間ずつ順番に運営を担いました。新型コロナウイルス感染症のまん延に伴い活動を休止しておりましたが、2年前より規模を縮小して再開し、今年度は昨年度より期間を延長し、だんだんとコロナ前の状況に近づいてきました。筆者と本学の薬学生2名は医師1名と医学生2名とともに8⽉15〜17⽇の運営を担当する最終班のメンバーとして参加しました。今回参加の医師と薬剤師はともに実務家の大学教授です。8月13⽇早朝に岐⾩市を⾞で出発。平湯温泉のアカンダナ駐車場からバスに乗り換え、上⾼地(⻑野県松本市)からは徒歩で2日かけて診療所に到着しました。
診療所の布団を干す薬学生
山岳診療所での薬剤師の役割は、調剤や服薬指導、医師への処⽅提案など通常の業務と変わりませんが、看護師がいない場合も多く、診療器具の管理や滅菌作業など通常の薬剤師業務では携わることが少ない業務を担うこともあります。また、最終班では、冬季に凍結することで品質に影響を及ぼす可能性がある医薬品を薬剤師の判断で荷下ろししたりもしています。
診療所では⾼⼭病の初期症状や軽症での受診が多いですが、今回は穂高岳山荘の横の岩場から滑落して右鎖骨を骨折し、岐阜県警のヘリコプターで搬送した症例もありました。学⽣の役割は事前問診や診察・調剤の⼿伝いなどのほか、登⼭ルートの確認なども行っています。また、穂高岳⼭荘での宿泊客向けの⾼⼭病予防教室の講師も学生が担いました。患者さんのヘリ搬送の際は、学生は岐阜県警に協力して登山道の通行規制などの役割も担いました。
診療所では⾼⼭病の初期症状や軽症での受診が多いですが、今回は穂高岳山荘の横の岩場から滑落して右鎖骨を骨折し、岐阜県警のヘリコプターで搬送した症例もありました。学⽣の役割は事前問診や診察・調剤の⼿伝いなどのほか、登⼭ルートの確認なども行っています。また、穂高岳⼭荘での宿泊客向けの⾼⼭病予防教室の講師も学生が担いました。患者さんのヘリ搬送の際は、学生は岐阜県警に協力して登山道の通行規制などの役割も担いました。
岐阜県警ヘリコプターらいちょう2号
による骨折患者の搬送
近年はSNSの影響もあり、経験の乏しい登山者による事故も多発しています。特に奥穂高岳周辺の岩稜帯では滑落などの事故も多く、西穂高岳からジャンダルムを経由して奥穂高に至るルートは一般登山道としては国内最難関ルートの一つとも言われていますが、今年は滑落による死亡事故が多く発生しております。山岳事故の多くは下山中に発生しており、体調不良による注意力の散漫なども危険因子となります。安全に登山を楽しむための助言なども山岳診療所の役割の一つと言えるでしょう。
実務家教員による山岳診療所の運営は、単に登山者に医療を提供するだけではなく、同行する学生にとってのロールモデルとなることも期待されます。数⽇間の共同⽣活を通じて、医療系の学⽣同⼠が互いの職能を知る機会にもなり、このような現場で学⽣の段階からの多職種連携によって将来の我が国の医療に良い影響を及ぼすことが期待されます。
【文責:林秀樹 岐阜薬科大学 地域医療実践薬学研究室 教授】
実務家教員による山岳診療所の運営は、単に登山者に医療を提供するだけではなく、同行する学生にとってのロールモデルとなることも期待されます。数⽇間の共同⽣活を通じて、医療系の学⽣同⼠が互いの職能を知る機会にもなり、このような現場で学⽣の段階からの多職種連携によって将来の我が国の医療に良い影響を及ぼすことが期待されます。
【文責:林秀樹 岐阜薬科大学 地域医療実践薬学研究室 教授】