month15 適応力とフォーチュンクッキー
数十年前の事、私が南米の地方都市に駐在していた頃、仕事帰りに立ち寄った小さな中華料理店で、食後のフォーチュンクッキーの中にはこんな文言が入っていました。
“You have the ability to adapt to diverse situations. Lucky numbers xx, …
(あなたには様々な状況に適応する能力がある。ラッキーナンバー xx, …)”
私は運命論者ではありませんし、それまでにも数多くのフォーチュンクッキーを開いてきたのですが、当時期待していた言葉だったのか、妙にその文言が気に入りました。しかも、その小さな紙切れが今も私の手元にあるということは、その後も人生の指針であり続けたということになります。
当時はまだ専門分野を決めかねている頃でしたが、その後たびたび経験することになる災害救援、人道危機の仕事や、さまざまな予想外の出来事に遭遇した時に、繰り返しこの言葉を思い出し、自己暗示によってなんとか乗り越えることができました。この小さな紙切れが、その後の自分の運命を決めたかのようです。
高知県立大学看護学部で新たに開講した「災害看護実践論」という4回生向け必修科目では、学外で開催される防災訓練に模擬患者として参加することによって、災害時の専門職としての役割を客観的に学びます。
参加した学生は、さまざまな反応を見せました。災害に関心が高く、普段からさまざまな訓練に参加していた学生が、なぜだか不満げだったかと思えば、はじめて訓練に参加する学生が大活躍することもありました。例えば、当初は安定した状態にある妊婦役が、訓練スケジュールの都合で、急に分娩してもらうことになりました。するとその妊婦役の学生は、陣痛の間隔や、症状など、もとのシナリオにない細かい想定を自分で考え、見事にその役割を演じ切ったのです。学生は、助産学専攻の学生でしたが、もともと災害に関する関心が高いわけではありませんでした。
“You have the ability to adapt to diverse situations. Lucky numbers xx, …
(あなたには様々な状況に適応する能力がある。ラッキーナンバー xx, …)”
私は運命論者ではありませんし、それまでにも数多くのフォーチュンクッキーを開いてきたのですが、当時期待していた言葉だったのか、妙にその文言が気に入りました。しかも、その小さな紙切れが今も私の手元にあるということは、その後も人生の指針であり続けたということになります。
当時はまだ専門分野を決めかねている頃でしたが、その後たびたび経験することになる災害救援、人道危機の仕事や、さまざまな予想外の出来事に遭遇した時に、繰り返しこの言葉を思い出し、自己暗示によってなんとか乗り越えることができました。この小さな紙切れが、その後の自分の運命を決めたかのようです。
高知県立大学看護学部で新たに開講した「災害看護実践論」という4回生向け必修科目では、学外で開催される防災訓練に模擬患者として参加することによって、災害時の専門職としての役割を客観的に学びます。
参加した学生は、さまざまな反応を見せました。災害に関心が高く、普段からさまざまな訓練に参加していた学生が、なぜだか不満げだったかと思えば、はじめて訓練に参加する学生が大活躍することもありました。例えば、当初は安定した状態にある妊婦役が、訓練スケジュールの都合で、急に分娩してもらうことになりました。するとその妊婦役の学生は、陣痛の間隔や、症状など、もとのシナリオにない細かい想定を自分で考え、見事にその役割を演じ切ったのです。学生は、助産学専攻の学生でしたが、もともと災害に関する関心が高いわけではありませんでした。
妊婦役を演じた学生(右)
訓練とはいえ、予期せぬ困難な事態に柔軟に対応することができる能力、状況を把握する能力、知識、技能を状況に合わせて応用する力は、災害で命を守るために必要不可欠な能力です。日頃からの訓練で培われる「予想される事態」に対する対応能力とは少し異なります。
「想定外の事態」への適応力を向上するには、看護学や心理学分野で各種モデルが提唱されていますが、フォーチュンクッキーによる自己暗示法は、この中には含まれていません。
果たしてこの学生はどうやって適応力を身につけたのでしょうか。
【文責:高知県立大学看護学部 教授 木下真里】
「想定外の事態」への適応力を向上するには、看護学や心理学分野で各種モデルが提唱されていますが、フォーチュンクッキーによる自己暗示法は、この中には含まれていません。
果たしてこの学生はどうやって適応力を身につけたのでしょうか。
【文責:高知県立大学看護学部 教授 木下真里】