災害薬事コーディネーターは、大規模災害時に医薬品の確保と供給、薬剤師の確保と適正配置をコーディネートするため、2012年に高知県で初めて導入され、2013年の静岡県に続いて都道府県単位で整備されてきました。
　2011年の東日本大震災では、医療用の支援医薬品が集積所に停滞したり、必要な場所に届かなかったり、支援薬剤師の配置などについてもニーズとのミスマッチがあったことなどの教訓から、「災害薬事コーディネーター」に関する制度を整備する都道府県が増えつつあります。また、2022年7月22日には、厚生労働省から「大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の整備について」の通知が発出され、大規模災害が発生した場合には、速やかに、都道府県災害対策本部の下に、その災害対策に係る保健医療福祉活動の総合調整を行うための保健医療福祉調整本部を設置し、その構成員として災害薬事コーディネーターが初めて明記されました。
　岐阜県薬剤師会では、2016年度に会員を対象とした災害薬事コーディネーター養成研修を実施し、コーディネーター名簿を整備してきましたが、2024年度から県委託事業として制度を一新し、新たに県内の地域薬剤師会からの推薦に基づき、2025年度までの2年間で76名の災害薬事コーディネーターを再養成することとなりました。2024年度は、岐阜薬科大学の実務家教員も協力してWEBと対面での研修を行い、2024年1月26日に実施した対面研修においては、岐阜県内で災害が発生した想定での情報収集や医薬品の手配などについての図上演習を実施しました。研修を終えた受講者には岐阜県知事から災害薬事コーディネーターの委嘱状が交付されました。2025年度も夏までに36名を養成する予定です。大規模災害発生時には、県内の指定された県庁本部や県保健所に参集し、災害医療コーディネーターらと連携して医薬品・血液の確保や支援薬剤師の適正配置について行政に助言することになっています。

【文責：林秀樹　岐阜薬科大学　地域医療実践薬学研究室　教授】