month13 二人の起業家から確認した大学時代のアントレプレナーシップ教育の意味
2024年1月から毎月第3金曜日、中日新聞朝刊の教育面に『挑戦を支える』のテーマでコラムを連載しています。アントレプレナーシップの涵養に向けた学びの支援が、どのような効果をもたらしているかを定性的に紹介することを意図した企画です。ありがたいことに、2年目を迎えています。
1年目は「アントレプレナーシップ教育の現場から」の視点で、アントレプレナーシップ教育の基本的な考え方、狙いと、年代別の体験型プログラム(教材)の実践例を紹介しました。2年目は「アントレプレナーシップ教育を越えて」の視点で、起業家として活躍する卒業生が、大学時代に体験したアントレプレナーシップ教育や、起業前後の体験が、今にどのように生きているのかについての取材記事をお届けしています。
表は、コラムと挿入している図表等のタイトルを時系列に並べたものです。第1回では、アントレプレナーシップとは何かを3領域15の行動特性として示し、アントレプレナーシップ教育の役割を規定しました。第2回は、アントレプレナーシップの価値は、ビジネス領域にとどまらないことを、起業家の4つの活躍領域として示しました。行政課題、社会課題、地域課題の解決にも効果があることを示しています。第3回では、キャリア教育を実践的に進めるアントレプレナーシップ教育として位置づけ、第4回では、涵養する能力により3つの類型の教育プログラムがあることを説明しました。第5回では、アントレプレナーシップ教育の担い手である支援者の必要性と、支援者育成の重要性を指摘しています。第6回は、行動特性を開発する教材の要件について紹介し、第7回は、能力開発のステップをインキュベーション・サイクルとして示しました。これは、支援者にとっての羅針盤でもあります。第8回と第9回は小学生、第10回は中学生、第11回は高校生、そして第12回は大学生向けのアントレプレナーシップ教育の実践例を紹介しました。
第13回からは、起業家として活躍する卒業生に、大学時代のアントレプレナーシップ教育の効果と、起業前後の学びの重要性について語っていただきました。第7回のコラムで紹介したインキュベーション・サイクルと、第4回のコラムで紹介したアントレプレナーシップ教育の3類型を当てはめると、どのステージで、どのような学びが重要かを分析しやすくなります。
さて、4月までに取材した卒業生の起業家2名は、大学時代に、起業家としての心構えが涵養されたと振り返っています。例えば、教材を活用して徹底的に考える時間や、実践と実証の経験をもったこと等を通じて、「テーマに社会性があり、やらなければとの意欲」が形成され、同時に私が繰り返し発した問いかけをきっかけに、「提供するソリューションを実現する意義」を再確認しています。次に、大学時代と起業前後の学びを通して、起業活動に必要な知識やスキルを獲得しています。具体的には、未来志向で事業をデザインする方法、商品開発の方法、顧客が満足する提案と解決策の精度を高める方法などです。
私は、一連の学びを促すための教育支援者です。その支援は、卒業後の学習機会にも及びます。特に、起業活動に必要な知識やスキルの獲得に向けて、起業後も育成途上の起業家が主体的に学び続け、自分を見つめなおすための、ステークホルダーと起業家の出会いの場づくりを意識してきました。
私の「アントレプレナーシップ教育・探究」は、2000年4月、ベンチャービジネス論の実務家教員として初めて授業を担当した際に感じた疑問が出発点です。それは、「これまで日本で行われていたベンチャービジネス論には、学生が自ら考え、成長する学びの機会が存在しないのではないか?」というものでした。人材育成や能力開発という視点が希薄で、それに向けた学びの場づくりが行われていなかったと、当時の私は考えていました。それから四半世紀、アントレプレナーシップ教育を試行錯誤しながら作ってきたというのが実情です。基礎理論や応用理論の探究はまだまだこれからです。TEEPコミュニティの皆さんと一緒に実務研究を深めていければと考えています。
1年目は「アントレプレナーシップ教育の現場から」の視点で、アントレプレナーシップ教育の基本的な考え方、狙いと、年代別の体験型プログラム(教材)の実践例を紹介しました。2年目は「アントレプレナーシップ教育を越えて」の視点で、起業家として活躍する卒業生が、大学時代に体験したアントレプレナーシップ教育や、起業前後の体験が、今にどのように生きているのかについての取材記事をお届けしています。
表は、コラムと挿入している図表等のタイトルを時系列に並べたものです。第1回では、アントレプレナーシップとは何かを3領域15の行動特性として示し、アントレプレナーシップ教育の役割を規定しました。第2回は、アントレプレナーシップの価値は、ビジネス領域にとどまらないことを、起業家の4つの活躍領域として示しました。行政課題、社会課題、地域課題の解決にも効果があることを示しています。第3回では、キャリア教育を実践的に進めるアントレプレナーシップ教育として位置づけ、第4回では、涵養する能力により3つの類型の教育プログラムがあることを説明しました。第5回では、アントレプレナーシップ教育の担い手である支援者の必要性と、支援者育成の重要性を指摘しています。第6回は、行動特性を開発する教材の要件について紹介し、第7回は、能力開発のステップをインキュベーション・サイクルとして示しました。これは、支援者にとっての羅針盤でもあります。第8回と第9回は小学生、第10回は中学生、第11回は高校生、そして第12回は大学生向けのアントレプレナーシップ教育の実践例を紹介しました。
第13回からは、起業家として活躍する卒業生に、大学時代のアントレプレナーシップ教育の効果と、起業前後の学びの重要性について語っていただきました。第7回のコラムで紹介したインキュベーション・サイクルと、第4回のコラムで紹介したアントレプレナーシップ教育の3類型を当てはめると、どのステージで、どのような学びが重要かを分析しやすくなります。
さて、4月までに取材した卒業生の起業家2名は、大学時代に、起業家としての心構えが涵養されたと振り返っています。例えば、教材を活用して徹底的に考える時間や、実践と実証の経験をもったこと等を通じて、「テーマに社会性があり、やらなければとの意欲」が形成され、同時に私が繰り返し発した問いかけをきっかけに、「提供するソリューションを実現する意義」を再確認しています。次に、大学時代と起業前後の学びを通して、起業活動に必要な知識やスキルを獲得しています。具体的には、未来志向で事業をデザインする方法、商品開発の方法、顧客が満足する提案と解決策の精度を高める方法などです。
私は、一連の学びを促すための教育支援者です。その支援は、卒業後の学習機会にも及びます。特に、起業活動に必要な知識やスキルの獲得に向けて、起業後も育成途上の起業家が主体的に学び続け、自分を見つめなおすための、ステークホルダーと起業家の出会いの場づくりを意識してきました。
私の「アントレプレナーシップ教育・探究」は、2000年4月、ベンチャービジネス論の実務家教員として初めて授業を担当した際に感じた疑問が出発点です。それは、「これまで日本で行われていたベンチャービジネス論には、学生が自ら考え、成長する学びの機会が存在しないのではないか?」というものでした。人材育成や能力開発という視点が希薄で、それに向けた学びの場づくりが行われていなかったと、当時の私は考えていました。それから四半世紀、アントレプレナーシップ教育を試行錯誤しながら作ってきたというのが実情です。基礎理論や応用理論の探究はまだまだこれからです。TEEPコミュニティの皆さんと一緒に実務研究を深めていければと考えています。
【文責:名古屋市立大学高等教育院教授・TEEP実施委員長 鵜飼宏成】
中日新聞朝刊コラム一覧
回 | 掲載日 | コラムタイトル | 挿入画像・写真 |
1回 | 2024年1月19日 | 「生きる力」身につけるために | EUによるアントレプレナーシップの行動特性 |
2回 | 2月16日 | 起業家 ビジネス以外にも | アントレプレナー 4つの活躍領域 |
3回 | 3月15日 | 社会的自立養うキャリア教育 | 「社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に必要な力」の要素(広義と狭義のアントレプレナーシップ教育) |
4回 | 4月19日 | 日本の「起業態度」世界から遅れ | 3種類のアントレプレナーシップ教育 |
5回 | 5月17日 | 学びの推進役 育てなければ | アントレプレナーシップ開発センターの展示販売会。大学生が開発した商品の魅力をPRした。 |
6回 | 6月21日 | 新たな価値創造 発想学ぶ教材 | NCU Action Doors for Students 名市大版アントレプレナーシップ育成事業。PBLプログラムを紹介する動画の冒頭部分。 |
7回 | 7月19日 | 起業家育成、起業支援の羅針盤 | インキュベーション・サイクル |
8回 | 8月16日 | 不確かな需要 新人店主の手腕は? | 電卓を片手に店主になりきり、ゲームを楽しむ子ども |
9回 | 9月20日 | 夢の新商品 子どもたちの挑戦 | 周囲の大人の支えを受け、小学生が商品のアイデアを練る「キッズ起業家EXPO」 |
10回 | 10月18日 | 社会が求める力 自然と身につく | アントレプレナーシップ教育で深める!中学生の職場体験 |
11回 | 11月15日 | 発想力評価 成長のきっかけに | 「チーム対抗!アイデア・ひらめきコンテスト」を紹介するチラシ |
12回 | 12月20日 | 商品開発 失敗からも学び | イベントの来場者に商品の説明をする学生たち |
13回 | 2025年1月17日 | 看護師の経験生かし起業 | スノームが手掛けるサービスのイメージ |
14回 | 2月21日 | 問題解決具体策 考え抜き到達 | 白石さんが大学時代に出場したビジネスプランのコンテスト(2012年12月、東京大学にて) |
15回 | 3月21日 | 起業家の育成は社会全体で | 異業種交流会「メッセナゴヤ」の「スノーム」のブースでストレスチェックを体験する来場者(2016年10月) |
16回 | 4月18日 | サービス構築、利用者の目線で | 「紙ひこうきサードプレイス」のサービスコンセプト |