month7 根拠に基づいた看護ケア~大学教育での取組み~
学生が患者役と看護師役になってケアを行ってみる【着替えの介助】
科学的根拠に基づいたケア(Evidence-Based Care, EBC)、あるいは科学的根拠に基づいた看護(Evidence-Based Nursing, EBN)とは、医学のEvidence-Based Medicine (EBM)の考え方に触発されて提唱されるようになった、看護ケアを科学としてとらえ、質の向上を図るという考え方である。日本では2000年頃から大学の看護学研究者・教育者の間に広まった。
このEBNの考え方の背景には、全国に看護学の4年制大学が増え、大卒の看護師が医療現場に増えたことが関係していると思われる。医学(EBM)でさえ、科学的根拠が確認できる医療行為は全体の10-20%であるというのだから、臨床現場で看護(EBN)の割合はもっと少ないだろう。それでも、大卒の看護師には、技術の速さ、正確さ、熟練、経験や直感に基づく判断能力に加えて、物事を論理的に、科学的に考える能力が期待されるようになったと思う。
高知県立大学の看護学部4回生には、このEBNをしっかり学習するまたとない機会が用意されている。与えられた架空の事例に対して、それまでに学んだ知識を総動員してケアを計画し、看護師役の学生が、患者役の学生に対してケアを実施してみて、その善し悪しを議論するという科目である。授業は学内の演習室で行うため、実際の患者や医療現場に迷惑をかける心配がないので、職場の慣例や先輩ナースの目を気にせずに、徹底的に根拠に基づいたケアを検討できるチャンスなのだ。
ところが、この授業でも、実際には学生はさほど羽目を外さない。学生のたてる計画はどれも整っていて正しいのだが、あまり違いが見られない。それもそのはず、同じ教科書や参考書、ガイドラインの記述を根拠としているのである。学生がイメージできるようにと、過去には教員が患者役、看護師役を演じた動画を作って見せたりもしたが、こうすると、学生は看護ケアを自分で考えるばかりか、動画の中のセリフを一字一句再現しようとするので、最近では見せるのをやめてしまった。
EBNの普及のためには時には慣例にとらわれずに、科学性を追求する姿勢も大事だと思うが、それを教えることの難しさを感じている。
【文責:高知県立大学看護学部 教授 木下真里】
このEBNの考え方の背景には、全国に看護学の4年制大学が増え、大卒の看護師が医療現場に増えたことが関係していると思われる。医学(EBM)でさえ、科学的根拠が確認できる医療行為は全体の10-20%であるというのだから、臨床現場で看護(EBN)の割合はもっと少ないだろう。それでも、大卒の看護師には、技術の速さ、正確さ、熟練、経験や直感に基づく判断能力に加えて、物事を論理的に、科学的に考える能力が期待されるようになったと思う。
高知県立大学の看護学部4回生には、このEBNをしっかり学習するまたとない機会が用意されている。与えられた架空の事例に対して、それまでに学んだ知識を総動員してケアを計画し、看護師役の学生が、患者役の学生に対してケアを実施してみて、その善し悪しを議論するという科目である。授業は学内の演習室で行うため、実際の患者や医療現場に迷惑をかける心配がないので、職場の慣例や先輩ナースの目を気にせずに、徹底的に根拠に基づいたケアを検討できるチャンスなのだ。
ところが、この授業でも、実際には学生はさほど羽目を外さない。学生のたてる計画はどれも整っていて正しいのだが、あまり違いが見られない。それもそのはず、同じ教科書や参考書、ガイドラインの記述を根拠としているのである。学生がイメージできるようにと、過去には教員が患者役、看護師役を演じた動画を作って見せたりもしたが、こうすると、学生は看護ケアを自分で考えるばかりか、動画の中のセリフを一字一句再現しようとするので、最近では見せるのをやめてしまった。
EBNの普及のためには時には慣例にとらわれずに、科学性を追求する姿勢も大事だと思うが、それを教えることの難しさを感じている。
【文責:高知県立大学看護学部 教授 木下真里】