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month1 映画に学ぶリーダーシップ―『ファインディング・ニモ』と『リオ・ブラボー』


 「スクワートが一人でどうするのか、見るとしようぜ」
 アニメーション映画『ファインディング・ニモ』(2003)のあるシーンで、ウミガメの子スクワートが海流の外に飛び出してしまいます。ところが、父親のクラッシュはまったく慌てません。そして平然と、上記の言葉を口にします。まもなくして、スクワートは自分の力で海流に戻ってきます。「おもしろかった!」と笑いながら。
 クラッシュは子の自立を促す親です。これと正反対なのが、カクレクマノミのマーリン。彼は息子のニモの安全に「超」がつくほど敏感で、息子に何も起きないようにいつも気をつけています。そんなマーリンに、旅の途中で出会ったナンヨウハギのドリーがこんなことを言います。
 「子どもに何も起きないようにしたら、子どもは何もできないわ」
 実際のところ、ドリーは大人でありながら、子どものニモ以上に危なっかしい魚なのですが、そんなドリーと一緒に旅するうちに、マーリンは徐々に子どもから手を放すこと、子どもの力を信頼することの大切さを学びます。
 これは親の物語ですが、リーダーの物語としても読めるでしょう。何かが起こることを恐れて、部下に仕事を任せないようでは、いつまで経っても部下は成長しません。守ることと見守ることは違います。大切なのは後者です。
 こうしたことを学ぶ上で、最良の映画は西部劇の古典『リオ・ブラボー』(1959)です。主人公はジョン・ウェイン演じる保安官チャンス。彼の周りには、失恋が原因でアル中になった元助手など、なかなか危なっかしい連中がいるのですが、チャンスは彼らを見守りながら、チームのメンバーとして活躍させます。
 自分がやったほうが確実に成功する場合でも、チャンスは必要ならあえて身を引きます。ミッションの成功と同じくらい、いやもしかするとそれ以上に、仲間の成長や立ち直りは重要だからです。愛情ある厳しさとは何かがよくわかる映画です。
 『リオ・ブラボー』はチームワークの力を描く映画としても魅力的です。その魅力は、『ファインディング・ニモ』やその続編『ファインディング・ドリー』にもつながるものですが、紙幅が尽きてきたので、その話はまたいずれ。古典であれ、新作であれ、名作映画には仕事にも役立つメッセージが秘められています。

【文責:川本徹 名古屋市立大学大学院人間文化研究科 准教授】
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