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ホーム >  コラム >  week88 一般化を促す「本質的な問い」―経験を自慢話にしないために―

week88 一般化を促す「本質的な問い」―経験を自慢話にしないために―


 筆者担当の『アクティブ・ラーニングの基礎―Project-Based Learningの設計ポイント―』のリフレクションシートに、興味深いコメントが昨年ありました。

 ――この講義を受講し、「概念的理解」によって「一般化」することの重要性を理解した。…これまでの経験を単なる自慢話にするのではなく、「一般化」することにより、転移が可能になることも理解ができたが、具体的にどのようにすれば「一般化」できるのかは、まだわかっていない。

 「単なる自慢話にするのではなく」という一文から、知識や経験を整理して伝えるだけでは未知の状況に対処するための「道具」にならないことを深く理解されているとわかり、大絶賛のフィードバックをしました。未来の受講生にも、では進化型実務家教員は「どう」教えるのかを共有します。
 学生のゴールは、その道のプロらしい思考の枠組みに基づいて知識・技能を総合することでした。そのためには、授業レジメにある「本質的な問い」の活用が不可欠です。米国の教育学者であるウィギンズ & マクタイによれば、その問いは、継続的な判断が求められる、正真正銘のパフォーマンスへの挑戦の文脈で問われて初めて、本質的なものになります。
 たとえば、野球・ゴルフ・テニスといった長い棒を振るスキルに関する科目なら、【鍵となる概念】は、力・回転効果・コントロールです。「回転効果は力にどう影響するのか」という問いが概念的理解に有効でしょう。また、自分の振りを発達させるために「どうすればコントロールを失わず最大の力で打てるか」という【方略】を自問することも必要です。第三の問いは【文脈】に関わるもの、つまり「どんなときにそっと振るべきなのか」です。(『理解をもたらすカリキュラム設計』日本標準 pp. 127-152)
 スキルの【目的と価値】がわかれば「なぜそうするのか」も理解できます。概念的理解は行動自体、すなわち「すること」と同じではありません。効果的に探究し意味をとらえる助けになるからこそ、本質的な問いが円滑で柔軟なパフォーマンスにつながるのです。
 PBLや反転学習、ケースメソッド、リフレクション、形成的評価などで、その単元・教科に本質的な問いとは何かを考えてください。スキル系の科目なら、上記の4つのカテゴリーは適用可能です。転移可能な深い理解は、本質的な問いを中心に学習を組み立てられるかどうかにかかっています。

【文責:名古屋市立大学 高等教育院 教授 山田 勉】
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