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week84 知ること、出会うこと、そして・・・・・・


 ESD(Education for Sustainable Development: 持続可能な開発のための教育)は、未来に向かう教育活動であり、世代間対話のなかで新たな文化を紡いでいく教育活動である。昨今の世界状況に鑑みて、未来世代のニーズを満たしているのかと自問自答すれば、言葉につまることが少なくない。多文化共生社会の実現に向けた他者との共生のあり方とは何だろうか、世界で起きている状況を見て、私たち大人は子どもたちに何を伝えられるのだろうかと立ちすくんでしまう。繰り返される暴力行為が報道されるたびに人間のどうしようもなさを感じ、失望や絶望に似た思いを抱くこともあるが、若者たちの行動に明日への希望や未来への灯を見ることができる。
 若者たちは、SNSを通してさまざまな情報にアクセスし、自らが発信源となって情報を拡散する。他者とのつながりのなかで知ること、知らせることに関与する。他者がどのような状況にあるのか、どのような思いをしているのかを知ることは異文化理解につながる第一歩である。無縁社会と言われる現代において、若者たちのつながり方や関わり方から知るという大切さを再認識することができる。知ることで出会えた他者と私たちはどのような世界をつくっていけるだろう。
 不確実性が高まった時代において、何が重要で、何が必要であるのかは私たち一人ひとりに問われる。私たちが持っている認識枠組みを更新や変容させていくためにも、私たちは知ることを怠ってはいけないように思う。国内外で何が起きているのか、そして、その状況と私自身との関わりとは何かを考えることを通して、私たちは世界とのつながりを捉え直すことができる。その繰り返しが私たちの認識枠組みを再構築していくのだろう。
 現行の学習指導要領の特徴の一つとされる「主体的・対話的で深い学び」は、他者との違いに出会い、異質性に応じる機会を提供する学びとも言い換えられよう。他者との関わりのなかで、他者を知ることで主体である自らのあり様をふり返り、どのようなふるまいが求められるのかを捉え直しながら、異質性をもつ他者とどのように共生社会を創っていくのかを考えていく。そこに芽生えるオルタナティブな文化に持続可能な社会につながる新たな価値の創造があるように思う。

【文責:曽我幸代 名古屋市立大学大学院人間文化研究科准教授】
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