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week74 新たな一歩、性犯罪に関する刑法改正が実現しました


※剣と天秤を持つ正義の女神の姿は、司法、裁判の公正さを表す

 2023年7月、性犯罪に対する刑法の改正が導入され、施行されました。この法改正において、新たに「不同意性交罪」という概念が導入されました。これは、これまでの「強制性交罪」に代わるものであり、同意のない性行為を明確に犯罪と位置づける重要な一歩です。
 従来の刑法では、性行為が犯罪とされるためには、相手が同意していないだけでなく、加害者が暴行や脅迫を行い犯行に及んだこと、または被害者が抵抗できない状態につけ込んだことなどの明確な証拠が必要でした。しかしこの要件は、現実の被害実態と合致していないとの声が被害者や支援者から上がりました。性暴力の被害者と支援者は、法律が被害者の声に適切に応えていないと感じ、「フラワーデモ」という抗議活動を展開しました。こうした動きに応じて、法改正を検討する法制審議会では、専門家だけでなく性犯罪の被害者も参加し、意見交換が行われました。こうした努力の成果が今回の改正につながったのです。
 今回の改正の中心は、たとえ強制が明白でなくても「同意のない性行為が犯罪とされる」という点です。これまでの「強制性交罪」と「準強制性交罪」が「不同意性交罪」として統合され、同意のない性行為が犯罪とされることが、明確になりました。同意がないことを示す要件として被害者の状態や加害者との関係性を考慮して8つの行為が具体的に示されています。特に、新たに追加された3つの要件に重要な意味があります。それは加害行為に直面した結果「恐怖や驚きによって身体が硬直することを想定した『恐怖・驚がく』」、「性的虐待を長年にわたって受けてきた場合を想定した『虐待による心理的反応』」、そして「経済的・社会的な関係に基づく影響力で受ける不利益への憂慮」です。これらの新設の要件は、被害要因に関する、専門家や臨床実務家たちの研究成果が法律に盛り込まれたものと言えます。
 この改正によって、法律が被害者の経験や心理を適切に考慮し、実際の犯罪の実態に合致したものとなりました。社会全体が安心して生活できる環境を整備する一助となっています。また、この改正は法的枠組みを見直す過程で、臨床実務家の果たす重要な役割を証明した一例と言えるでしょう。

【文責:神谷栄治(中京大学心理学部 教授)】
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