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week65 LGBTの若者とメンタルヘルス


レインボーリボンはLGBTや性的少数者への理解・賛同を意味します

 2023年6月16日、参議院本会議で「LGBT理解増進法」が可決・成立しました。この機会にLGBTについて、心理学的観点から考えてみることにします。LGBTとは「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」など、性的少数者を表す言葉の頭文字で作られた性的少数者の人たちを指し示す用語です。こうした性的少数者の若者は、さまざまなメンタルヘルス上の深刻な問題を抱えやすいことが調査から明らかになっています。ここでは「LGBTの若者における自殺念慮、学校生活での困難、そしてサポートシステムの不足」という問題点に焦点を当て、その重要性と対策について考えてみましょう。

●自殺念慮の高さ
 認定NPO法人ReBitの2022年の調査によれば、LGBTの若者のうち、48.1%が過去1年に自殺念慮を抱え、14.0%が自殺未遂、38.1%が自傷行為を経験していると回答しています。この結果は、日本財団の「日本財団第4回自殺意識調査(2021)」と比較すると、LGBTの若者の自殺念慮は3.8倍高く、自殺未遂経験は4.1倍高い状況にあります。これらのデータは、LGBTの若者のメンタルヘルスの問題が深刻であることを示しています。

●学校生活での困難
LGBTの若者は学校生活でさまざまな困難を経験しています。学校現場では異性愛主義の傾向や伝統的な性役割の価値観が根強く、異性愛でない場合や性自認に困難を抱えている生徒が実際にそこに存在することがあまり想定されていません。そのため、こうした若者が自分は認められない存在だと感じたり、さらには自分の居場所が学校にないと感じやすくなっています。これにより、孤立や自己否定などのストレスが生じ、メンタルヘルスの問題につながります。さらにはこうした問題で差別やいじめが生じた場合も、伝統的な性的価値観が支配的なために、十分なサポートが受けられないことにもつながります。

●サポートシステムの不足
 性的マイノリティにまつわる問題を相談したいと思っても、教員やカウンセラーが十分に理解できない場合が多く、相談しにくい状況があります。これにより、こうした若者は孤立感や絶望感を抱え、メンタルヘルスの問題をさらに悪化させる可能性があります。安心して話しをする場所が非常に得られにくい現状があるのです。
 LGBTの若者のメンタルヘルスの問題は深刻であり、取り組むべき重要な課題です。学校や教育機関では、LGBTの若者を受け入れ、支援するための体制づくりが急務です。現在の問題点を解決するためには、今回の法律成立を契機に、社会全体が意識を高め、理解を推進する必要があります。多くの心理援助の実務家は、性的少数派の人々に接し相談を受け、その問題の深刻さを理解していることが多いと思います。心理援助の実務家には、LGBT等の性的少数者の社会的な理解を増進するための社会的使命が期待されます。

【文責:神谷栄治 中京大学心理学部 教授】
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