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week62 学び舎はクリーニング屋


 今年度のTEEP基本コースも開始から2か月が過ぎました。ここで息抜きを兼ねて、少し雑談(思い出話)を。
 学生時代は勉強と同じくらい、バイトにも精を出しました。プロ野球のチケットのもぎり、コンサート会場の片づけから、学習塾の英作文の添削まで、さまざまな仕事を経験しましたが、いちばん印象に残っているのは、クリーニング屋の受付です。
 「のんびりしてそう」という理由で応募したのですが、実際はその正反対でした。私が勤めた店は、単身赴任者が多いエリアにあり、そこは「ワイシャツ激戦区」。土曜のお昼近くになると、1週間分(ときに2週間分)のワイシャツを抱えた人々が、各クリーニング店に長蛇の列を作ります。なぜお昼近くかと言うと、それが当日仕上げの締切だからです。
 列は店舗の外まで延びることも。なるべくお客さんを待たせないように、迅速に仕事をこなさなければなりません。しかし、焦りは禁物です。衣服に破れなどがあれば、工場に送る前に確認しておかねばなりません。また、何より大切なのは、ポケットに物が残っていないかどうかの確認です。赤ペンがポケットに残った服を洗濯機に入れてしまったときの悲劇を想像してみてください(私には怖すぎて想像できません!)。
 迅速さと慎重さ。このどちらが欠けても、ワイシャツ激戦区のクリーニング屋の受付は務まりません。私は緩急を自在にあやつるプロ野球の投手さながらに、三振の山ならぬワイシャツの山を築きました……というのは誇張で、ときどき被ホームラン級の失敗をしました。
 勉強が忙しくなったため、このバイトは半年足らずでやめたのですが、あとで気づきました。迅速さと慎重さ、このバランスがすべての仕事の要だと。研究もそうです。当然、研究は誤りのないように、細心の注意を払ってやらねばなりません。かといって慎重さが度をこすと、いつまでたっても論文は完成しません。
 このバランスの大切さを身をもって学ぶことができたのは、大学ではなくクリーニング屋でした。いまでも仕事が忙しくなると、あの土曜日のお昼前に、大量のワイシャツを捌いたときのことを思い出します。
 さて、TEEP基本コースではシラバスの作成や模擬授業の準備が始まります。とりわけ大変な時期ではありますが、「緩急」を意識しながら乗り越えましょう!

【文責:川本 徹 名古屋市立大学大学院人間文化研究科 准教授】
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