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week57 ESD(持続可能な開発のための教育)


 ESD (Education for Sustainable Development)は、持続可能な社会づくりのために求められる価値観・行動・ライフスタイルを学ぶ教育活動である。それは、地球規模で続く、持続不可能とも思われる諸状況―たとえば気候変動や人権侵害、経済格差など―を持続可能にするという社会変容に向けて、一人ひとりの自己変容を促す教育とも言い換えられる。今であればSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)を達成するための一手段として見られることもある。
 私たち人間の生産と消費活動の影響によって、地球環境および人類の持続可能性が脅かされていることに警鐘を鳴らしたのが、「持続可能な開発」という概念であった。従来の開発のあり方を再考し、経済発展・社会的公正・環境保全の均衡を図り、世代内/世代間公正を実現する社会づくりを目指したのである。持続可能な開発とは、これまでとは異なるオルタナティブな開発モデルとは何かを考え、それを実行していくプロセスそのものでもある。そうした考えを教育および学習のあらゆる側面に、すなわち、フォーマル・ノンフォーマル・インフォーマルな学びに浸透させていこうとしたのが、ESDである。
 持続可能な開発が問われた1992年の地球サミットでは、当時12歳のセヴァン・スズキがスピーチをしたことが有名である。彼女は、学校で、いや幼稚園でさえ、あなたたち大人は私たちにするなということを教えてくれるが、あなたたち大人はなぜ私たちにするなという行いをしているのか?と訴えたのである。あなたなら、この問いにどう応えるだろう。
 教育という営みは、何のためになされているのか・・・・・・自然および他者との共生について、私たちは学校教育のみならず、地域社会でもどうふるまうかを学ぶ。その学びが私たちの日々の暮らしや営みに活きているかどうかが問われている。教室の中だけで、つまりは試験でよい点をとれれば、学びが完結するのではない。教室を超えて学びが社会に還元されることが求められているのである。私たち一人ひとりと教育と社会、このかかわりを改めて捉えなおすこと、これがESDの醍醐味であるように思う。

【文責:曽我幸代 名古屋市立大学大学院人間文化研究科准教授】
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