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week56 知っていますか?性的グルーミング


 日本政府は、若年層の性被害に関する問題を啓発するため、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、広報・啓発を集中的に行っています。しかしながら、こうした啓発にもかかわらず、若年層の性被害は増加傾向にあります。このため、法制審議会は、性犯罪をめぐる刑法の見直しを議論し、「グルーミング罪」の新設を盛り込んだ試案を昨年10月に公表しました。この「グルーミング」という概念について、犯罪予防の観点から解説します。
 若年者の性被害は、実は身近な人や信頼している人物によって引き起こされることが多いのです。特に、ネットを使ってグルーミングと呼ばれる手法を用いた加害者による被害が増加しています。グルーミングとは、性的な目的を隠して子どもに接近し、「信頼関係」を築き手なずける行為です。オンラインでの接近が一般的です。加害者は子どもに対し、玩具や楽しいイベントへの参加の機会を提供したり、悩みの相談に乗ったりすることで、子どもとの間に「信頼関係」を築いていきます。しかし、加害者は実際にはその関係を利用して、子どもを性的な目的で利用することを目的としているため、信頼関係を築いた後、性的画像の提供を求めたり、性的接触を求めたりするのです。こうした被害はその後児童の心に深刻で長期的な後遺症をもたらします。
 グルーミングによる性被害を未然に防止するためには、正しい知識の普及や法的な対応が必要不可欠です。子どもたちを守るためには、まずは親や教育者、地域の人々が性被害やグルーミングについて正しい知識を持ち、子どもたちにも適切な啓発を行うことが重要です。また、法律的にも厳しい対応をとれるようにすることで、法的抑止力を強めることも求められます。子どもを守るためには、社会全体で協力して、取り組み続けていく必要があるでしょう。
 スクールカウンセラーや臨床心理士など、学校や、児童相談所、警察等で児童の対応をしたことのある臨床実務家は、こうした被害を扱った経験がある人が多いものです。こうした被害のサポートに対応した経験は、説得力ある啓発活動や、地方自治体や地域や学校への施策の提言につながります。臨床実務家には活動の一環として、実務経験を糧に、安全・安心な社会づくりのために、積極的に社会貢献していくことがもとめられます。

【文責:神谷栄治(中京大学心理学部 教授)】
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