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week53 ボード型ビジネスゲームを活用した経験の言語化


名古屋市立大学経済学研究科前期課程
経営者コース (チラシ表面)

 2023年4月5日付の日経ビジネス電子版に「ビデオゲームの経済学から見える『イノベーション』と経営者の役割」と題するハーバード経営大学院の天野友道先生の論考が掲載されている。この論考は、私たちに「イノベーションは、見かけの不確実性が大きいのが特徴」であることを示し、経営者の役割を再定義する必要性を示唆している。すなわち、不確実性には、事前に見立てをつけることができ、減らすことのできる不確実性と、見立てを付けることができない真の意味での「リスク」がある。そして、経営者は、事前の見立てができる不確実性を要素分解し、優位な方向に導くための環境づくりをしている職務である。

 私は、名古屋市立大学大学院経済学研究科で「経営者コース」担当の実務を背景とする教員の一人である。このコースの特色は、代表取締役もしくはそれに準じた経験者のみが参加することだ。経営学や歴史・制度の研究者との壁打ちを通じ、経営者としての経験を振り返り、言語化、体系化、構造化し、将来的にはその成果を人材育成等に生かすことを目指している。暗黙知に近い経験が言語化され、基礎理論の応用理論として示される、あるいは、従来対象になってこなかった領域や論点にスポットを当てることができると期待している。

 研究者との壁打ちセッションは「特別演習」として展開され、12名の研究者との壁打ちが待っている。本年度は7名の経営者が参加することが決まっている。壁打ち方法は研究者毎に違い、私はビジネスゲームを活用する。経営者同士のゲーム対戦を通じて、決断したシーンとその際にどのような場の見え方をしていたのか、いかなる選択肢があったのか、なぜその決断を下したのか、そして、結果的に次の意思決定にどのような影響を与えたのか等を振返り、暗黙知とされているものを形式知化する。あわせて、形式知化できない領域をはっきりさせる。この一連の振返りが面白いのは、仕事や生活面での経験の違いを超えた共通する経営者としての見え方がある一方、経験の違いから生じる決断の特徴も明らかにできることだ。

 実務家の経験を言語化する方法は様々だ。私は、教具としてボード型ビジネスゲームを採用している。トータルゲームとよばれるものだ。興味のある方は、是非、開発企業(双申株式会社)のサイトを確認いただきたい。私はかれこれ23年ほどプレイし続けているかな(笑)。

名古屋市立大学経済学研究科前期課程
経営者コース (チラシ裏面)

ボード型ビジネスゲーム 『トータルゲーム』:双申株式会社URL https://www.soshin.cc/

【文責:鵜飼宏成/名古屋市立大学学長補佐・経済学研究科教授・TEEP実施委員長】
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