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week40 2023年こども家庭庁が発足します


 2022年6月、「こども基本法」および「こども家庭庁設置法」が国会で成立しました。2023年4月からこれらの法律は施行され、こども家庭庁が発足し実働していくことになります。なぜ今こうした子どもに関連する法律が制定されることになったのでしょうか。
 これまで日本では、子ども・青少年の成育に関する施策は、教育領域は文部科学省、福祉領域は厚生労働省、非行処遇領域は法務省といったように、省庁ごとに分かれて立案され運用されてきていました。さらにまた、担当省庁による施策は、施策の対象を年齢で区切っているため、子どもが幼少期から青年期・若者に成育していく過程を連続的に支援することが困難でした。こうした縦割り行政の弊害を取り除き、省庁や施策の視点からではなく子どもを中心に置いて「こどもの視点を尊重し、こどもの最善の利益を考えていく」ために、これらの法律が作られたのです。今回のこども関連法の施行によって、従来の施策の限界が乗り越えられることが期待されています。
 今回、これらの法律によって創設されることになるこども家庭庁は3部門に分かれており、その一つに「支援部門」があります。この部門は、困難を抱える子どもや若者が、困難な状態を脱し軽減したり、成育環境にかかわらず子どもが健やかに成長できるよう、子どもと家庭に対する、アウトリーチ型・伴走型の支援に関する業務を行う部門です。具体的には、これまでなかった新しい課題や、どの省庁が担当するかはっきりしなかった課題や対応が十分ではなかった課題を扱うための部門であり、こども家庭庁の創設の中心的目的を担う重要な部門となります。
 近年、対応が遅れており、早急な対策が求められている子どもに関する社会的課題は多くあります。例えば、家庭における子どもの虐待、子どもの貧困、学校でのいじめ、不登校、事情があって家庭で暮らすことが困難な子どもの社会的養護制度の不全などです。こうした課題が改善されないままである背景には、さまざまな問題がありますが、その主要な要因の一つに、専門性を持った児童を支援する職員等の人材の不足およびそうした職種の専門的職能の不足ということがあります。子どもの成育にまつわる様々な問題に対応するには、心と身体の発達についての知識、疾病や障害をもった子どもへの対応スキルそして、子どもを支援する法や施策の知識といった幅広い見識が必要であり、さらにまた多職種の専門家との連携スキルも不可欠となりますが、こうした専門性を備えた人材が現状では足りておらず、養成体制の整備が求められています。
 今回、こども家庭庁が創設されると、多様な子どもへの切れ目ない支援が推進されていくことになりますが、子どもの支援を担当する職員を養成するには、その実務にこれまで携わってきた実務家が欠かせません。障害や疾患、問題をもつ子どもを支援してきた経験を積んできた実務家がその経験を次世代の支援職に伝承していき、後進を育成していくミッションが今後ますます重要となっていくと考えられます。


【文責:神谷栄治(中京大学心理学部 教授)】
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