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ホーム >  コラム >  week39 私の恩師は「現場のことがよくわかっている」大学教授でした

week39 私の恩師は「現場のことがよくわかっている」大学教授でした


 「卒業研究」の季節です。私の学生時代は「卒業論文」でしたが、いつの頃からか、科目名が変わりました。「論文」→「研究」のスタンスの違いは大きい。
 もう40年近く前の話です。大学院に進学し、自主的な「勉強会」で卒論の概要を話しました。私の卒論の結論は、「現在の体育の授業には理論と実践の統一が必要である」でした。大正時代に注目されたある小学校の体育実践記録を自分なりに分析して導いた、自信満々の「論」でした。
 それを聞いていたある大学の教授が、「キミ、何、当たり前のこと言っているの?」とおっしゃった。ショックでした。「当たり前のことですか?」と聞き返すのが精一杯でした。
 いまから思えば、「当たり前のこと」です。あの教授の指摘は正しかったと思います。彼は何を言いたかったのか。「もっと現場を見た方が良いよ」ということだったと、今は素直に納得できます。
 私の卒論を指導してくださった恩師は、前職は中学校の体育教師で、すばらしい体育実践を評価されて、大学に招かれた方でした。体育科教育学の教授でしたが、大学院は経験されていません。「清原君、学校体育の歴史をやりたかったら10000時間、体育授業を見た方がいい」と常々おっしゃっていました。研究するようになってから、その意味がわかるようになりました。歴史とは、「過去と現在の対話」です。現在の体育授業の課題がよく理解できていると、歴史の叙述は豊かになります。
 「現実の重み」があります。本当のことは、現場を歩かないとわからない。名古屋市立大学でTEEPの構想を聞いたとき、思い浮かべたのが私の恩師でした。「現場のことがよくわかっている」大学教授でした。私たちゼミ生がわかったようなことを言うと、とことん詰められました。怖かったです。けれど、恩師から教えていただいたあの姿勢がなければ、いまの自分はないと思っています。
 10000時間は無理ですが、いつも現場に身を置き、「現実の重み」を感じながら、学生の指導をしなければならないと心がけています。


【文責:清原泰治(高知県立大学地域教育研究センター長 教授)】
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