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week35 学生が変化するターニング・ポイントをどんな時に意識できるか?


 筆者は、2019年度よりアントレプレナーシップを名古屋市立大学全体へ定着させることに取り組んでいる。手始めとして、アントレプレナーシップ(起業家的な行動能力)を高めるマインドセットとスキルセットを涵養する学びの場づくりを、主として高校生から大学生・大学院生を対象に、翌年度からはスタートアップ支援の環境づくりを、主として教職員を対象に取り組んできた。この他、小学校、中学校のより若年層からのアントレプレナーシップ教育教材とプログラムも用意し、総合的学習の時間や生涯学習プログラムとして実践している。
 筆者のアントレプレナーシップ教育の初動は、調査会社から大学(前任校)に転職した2000年であるから、かれこれ四半世紀近くとなった。試行錯誤の中から、民間企業、非営利活動団体の知恵を活かし、「0to1」&「1to100」の事業創出に向けた未来デザイン考程、持続可能な会社経営を疑似体験するビジネスゲーム(トータルゲーム等)を教材として準備し、これらの教材を用いた体験プログラムをプロセス・デザインし、実践する中で起業家的マインドとスキルセットを参加者が獲得する機会を創出し続けてきた。
 今回のテーマにつながった問「先生は『学生が変わったな?』と意識されるのはどんな時ですか?」は、11月19日(土)に行った高校生と大学生が参加するビジネスゲーム実践をする中で「トータルゲーム情報サービス業版」の開発会社の嶋﨑社長から発せられたものだ。
 少し回答に迷ってしまった。その理由は、確かに変化のターニング・ポイントを意識できているが、それは一様ではないからだ。あれこれ支援してきた大学生の顔と活動を思い浮かべながら、2タイプに類型化して回答した方が、変化する瞬間を伝えやすいと考えた。2タイプとは、例えて言えば「思考優先型」と「行動優先型」だ。これは学生があることを探究するきっかけの好みといっても良いかもしれない。そして、ここでいう思考優先型とは、始める前に当該領域の仮説を立てることができ、いかなる領域のことを調べればヒントを得られるとイメージできる者。行動優先型とは、始める前にはテーマ以外に具体的なイメージが持てない者。他方で、両者に共通しているのは「やりたい」という意欲だ。
 嶋﨑社長には両タイプの具体的なプロセスを説明したうえで、次のように回答した。
 ・・・さて、「学生が変わったな?」と意識できるのは、改めて考えると次の2つが合わさった時です。まず、活動報告の時に学生が目を輝かせ、自信にあふれた表情と声で、活動の結果が具体的なエピソードとともに語られ、次に行うことを自らの考えで伝えてくる時。次に、私からの「布石」となる追加の問いに対して、即座に、新しい繋がりを意識し、発展的に活動を再構築しながらプランニングする時。・・・
 「思考優先型」の学生、「行動優先型」の学生は、初動のしやすさの違いであって、ポイントは、体験から新しい仮説が生まれ、次の体験で検証するサイクルが生じて、学生自身も意識できた時に、自他ともに認める「変化」が生じていると考えている。
 筆者がアントレプレナーシップ教育を始めて5年を超えるころになって、学生による事業創造(商品開発のプロトタイプ、ビジネスプラン)が企業人等による第三者評価で優秀な成果をおさめ始めた。そこで、自分自身の支援者としての経験を振り返った際、学生、企業は課題に対しそれぞれの「編集モデル」を交換していること、そして、支援者自身の「編集モデル」が鍵になることを強く意識した。それを試論ではあるが、編集モデルを含んだ支援者の論理として体系化し、形式知化した。
 実務家教員は、多様な課題の支援者として機能することが求められている。 TEEP専門コース(経営実務)では、アントレプレナーシップ・エデュケーターの学修を通じ、課題解決支援者としての能力を高める機会が盛り込まれている。これは、会社内の第2、第3創業等をプロセス・デザインする目を涵養することにつながることも期待できる。是非、一度、TEEP/進化型実務家教員養成プログラムの門を叩いてみてほしい。2023年1月7日(土)午前10時より、第3期生向けの応募説明会が開催される。待っています!

【文責:鵜飼宏成 (TEEP実施委員会 委員長/名古屋市立大学学長補佐(スタートアップ、イノベーション担当)、大学院経済学研究科 教授(アントレプレナーシップ))】

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