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ホーム >  コラム >  week34 四国お遍路における「先達さん」のありがたさ

week34 四国お遍路における「先達さん」のありがたさ


 あまりまじめではないのですが、昨年から四国お遍路を始めました。本来の趣旨からすると、歩いてお遍路すべきでしょうが、とてもそういう余裕も体力もなく、時間を見つけて自家用車で回っています。続けて出かけることはできず、思い出しては「今日だけお遍路」になっています。ですから、煩悩を捨てて悟りを開くどころか、作法が気になって集中できておりません。
 お遍路は、札所の寺院に参詣して手を合わせるだけではありません。決まった作法があります。いくつもの手順があり、それを記憶するのはなかなかたいへんなのです。まず、山門をくぐる時には手を合わせ一礼します。次に、手水場(ちょうずば)のひしゃくで手と口を漱(すす)ぎ、許されるところでは鐘楼で鐘を撞き、ろうそく立てのケースの奥からろうそくを立て、3本の線香、お賽銭、納め札を捧げてようやく本堂の前に立てます。その後も作法は続き、決められたお経を順番通りに上げて、本堂から大師堂に移動し、……、と手順通りにお参りをします。
 それを細かく説明したwebサイトはあるのですが、現地で毎回それを確認するのは時間もかかるし、場所を取って他のお遍路さんに迷惑をかける。それで、四国お遍路に慣れていらっしゃる方に付き添っていただいています。
 「先達さん」と呼ばれる方がいらっしゃいます。団体参詣者のお世話をされている方たちです。四国お遍路を4周以上されているそうです。何事もそうですが、よく知る方に教えていただくことは、たいへん合理的であり、効率的です。四国お遍路もそうで、経験豊富な「先達さん」に付き添ってもらうことで、他のお遍路さんの邪魔にもならず、余計に気を遣うこともなく、正しい手順で心を込めてお参りすることができます。現場を知る方は強い。
 大学教育も同じだと思います。テキストに書いてあること、講義で伝えることには限りがあります。経験は、時に知識を超えます。それゆえに、複雑化するこれからの時代にあって、実務家教員は大学教育に有用な人財であると思っています。TEEPの重要性は、これからますます高まっていくでしょう。
 さて、私のお遍路はどういう状況か。高知県から始まり、現在愛媛県に入ったところです。見習うべき経験者・先輩たちのお力を借りないと、大願成就には至りそうにありません。


【文責:清原泰治(高知県立大学地域教育研究センター長 教授)】
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