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week17 人口減少が続く高知県の中山間地域


人が減ってしまった集落に、案山子が“2人”
寄り添って座っていた

 増田寛也氏の『地方消滅』(中央公論新社刊)が発刊されたのが2014年8月。帯に書かれていた「896の市町村が消える前に何をすべきか」は衝撃的でした。その当時は、「市町村が消える」というイメージはまったく持てませんでした。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が同年12月に閣議決定され、高知県や県内の各自治体は「審議会」や「有識者会議」を設置して、この施策に沿った独自の総合戦略を策定し実施してきました。KPI値を検証する作業も毎年続いています。人口減少のスピードが緩やかになったところもあると聞いていますが、「決定打になっている」とは言えず、人口減少は続いています。
2021年4月23日、高知県は前年10月に実施された国勢調査の速報値を発表しました。翌日の高知新聞が「県人口5年で5%減」「 69万2065人 減少率最大」という見出しでその内容を伝えています。5年前の国勢調査と比較して、人口は3万6211人減り、減少率は5.0%に拡大していました。(高知新聞2021年4月24日付)そして、人口減少はさらに進み、2022年4月1日現在、推計人口を発表するようになって初めて県人口は68万人を割り込み、67万7888人になったと高知県が発表しました。これは、大正時代並みの水準なのだそうです。(朝日新聞2022年4月23日付)信じられない数字です。
 高知県は全国から15年先行して1990年に人口自然減になって以来、「人口減少の負のスパイラル」(高知県庁HP)が続いています。人口減少と少子高齢化の現実を突きつけられる経験は、高知県の中山間地域で活動していればいくらでもあります。しかし、改めて、新聞の見出しで「人口減『何年持つか…』」「中山間からうめき声」という見出しを付けて県内の実情を伝える記事を読むと、重い現実に押しつぶされそうになります。
 昨年、高知県は10年ぶりの集落調査を実施しました。(「令和3年度高知県集落調査の結果について」)10年前に比べて、中山間地域は確実に深刻な事態に追い込まれています。本学では、6月30日に所管課の高知県中山間地域対策課長をお招きして、SD研修会を開催しました。
 「課題先進県」から「課題解決先進県」へ。公立大学は、県民や設置者と共に地域の課題解決に向けて取り組むことが使命です。中山間地域の人口を増やすことはできませんが、中山間地域に暮らす人々が一日でも長く住み慣れた地域で心豊かに暮らせるように、「支え合いの地域社会づくり」に向けての提案はできるはずです。


【文責:清原泰治(高知県立大学地域教育研究センター長 教授) 】
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