グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


ホーム >  コラム >  week11 平行四辺形の定義と言われても

week11 平行四辺形の定義と言われても


 今回のコラムは、私の大学院生時代の思い出話から始めたいと思います。
 さて、私が大学院生だったとき、授業で先生が、「平行四辺形の定義を言ってみなさい」とおっしゃったことを覚えています(ちなみに数学の授業ではありません)。そのときは、授業を受けていた院生の誰もが、平行四辺形の正確な定義を説明できなかったので、そのまま終わってしまいました。しかし、私たちとしては、「いったい、何の話だったのだろう」ということになったので、とりあえず、受講生のうちの年長者であった私が、後日、その質問の趣旨をうかがいに行きました。
 先生によれば、概ね、「普通、四角形といえば、正方形や長方形をイメージするよね。それは、それらが目につきやすいからです。でも、正方形や長方形を正確に説明するには、平行四辺形を理解できていないと無理だよね。だって、平行四辺形の中でも特殊なものが長方形や正方形なのだから。つまり、研究にせよ何にせよ、ついつい、目につきやすい話題性のあるものに飛びついてしまうけど、その本質に迫るには、背後に隠れている基礎をきちんと理解することから始めなくてはならないのだよ」という話を言いたかったそうです。
 先生にすれば、そうした続きを話したかったみたいなのですが、平行四辺形の定義で躓いてしまったので、本来、話したかったことを言えなかったわけです。
 当時の私からすれば、「禅問答じゃないんだから、急に平行四辺形の定義と言われても…普通に、基礎が大事だよ、と言って下されば良かったのに…」という思いがなかったわけではないのですが、今でも、この指摘は大事なことだと思い、心に響いています。
 おそらく、日々、実社会で実務に携わっていらっしゃる方々は、最新の現象や話題、技術に精通なさっているのだろうと思います。そして、それらの知識や経験を体系化するということは、それらの背後に隠れている基礎を理解し、本質に迫ってこそ、可能なことではないでしょうか。
 そうしたことが可能となるきっかけに、TEEPがなるとすれば、とても嬉しく思います。


【文責:小林直三(名古屋市立大学大学院人間文化研究科 教授】
Page Top