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week9 リフレクション:SDGsのレンズを通して


 ESD(持続可能な開発のための教育)やSDGs(持続可能な開発目標)と聞くと、新しい言葉であるがゆえに何をしたらよいのかわからないと思考停止になったり、見て見ぬふりをしたりする人も少なくない。また、何かを始めたいがどうしたらよいかわからず、「何をしたらいいですか?」と相談に来る学校関係者、企業や行政の担当者もいる。筆者の応答はいつも同じである。「はじめから何か新しいことを始めようとするのでなく、まずは自らの実践や事業をSDやSDGsの視点から見直してみたらいかがですか?」

 いまの状況を自らに引きつけながらふり返り、何が課題であるのか、何が求められるのかを考え、行動に移していくこと、それがSDGs達成につながる近道であるように思う。すでに「ある」ことのリフレクション(ふり返り)を通して見えてくる特徴や課題を再価値づける。そのときの視点としてSDやSDGsを使うのである。実践、商品やサービス、進行中の事業、組織のあり方などをSDの視点から新たに特徴づけることで見えてくることが持続可能性に通じる。反対に、課題として挙がってきたことが持続不可能性につながる。その課題にSDの視点から取り組むことが、その組織独自の持続可能な開発となっていく。ひいては、それがSDGs達成につながる独自の取り組みとなり、また実践や事業の発展にもつながっていくだろう。さらに、従来とは異なる言葉、すなわち、同業者などの身内で通じ合う言葉から持続可能性という共通言語を使って、見えてくる特徴などを説明することができるようになれば、異業種の者にもその魅力を伝えることができよう。
 SDやSDGsは同じ文化の下では当然と思っていたことが異文化を背景にもつ者には通じないことにも気づかせる。換言すれば、SDやSDGsは異世代や異業種、他地域の文化圏などにいる「他者」とコミュニケーションできるように、自らの実践や事業などを持続可能性という共通言語に翻訳して説明するという「学びなおし(unlearning)」を促しているとも言えよう。
 すでに「ある」ことのリフレクションを個々人やグループ等で取り組み、真にSDGs達成につながる種を探すことから始めてみたらどうだろう、ポップなカラーで色づけされるSDGsウォッシュとならないためにも。そのためにはもちろん、SDやSDGsの理解は必要となる。その学びを始めることがリフレクションを誘発し、それまで見えてこなかった「他者」の世界に出会えるかもしれない。

【文責:曽我幸代(名古屋市立大学人間文化研究科 准教授)】

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