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week7 災害対策移動薬局車両モバイルファーマシー


薬局や病院の調剤室と同等の機能を持つMPの調剤室

 岐阜薬科大学ではTEEPプログラムの減災・医療コースにおいて、災害対策移動薬局車両モバイルファーマシー(MP)を利用した講義や実習を行います。MPは東日本大震災の教訓から、2012年に宮城県薬剤師会で開発されました。東日本大震災では、津波によって多くの病院が被害を受けましたが、薬局の被害も大きく、調剤に必要な器具や機械も津波に流されたりして使用不能になりました。早期から、被災地では各地で救護所が設置され、医薬品も供給され始めましたが、医薬品が届いていても患者さんに渡すことができないことがありました。
 錠剤、カプセル剤、湿布や点眼剤などは、薬剤師が処方箋を確認したのち、数を揃えて患者さんにお渡しします。このような調剤は計数調剤といい救護所などでも実施可能です。実際に、これまでの災害で多くの薬が救護所で調剤されて患者さんに供給されました。しかし、小児用の薬剤、抗てんかん薬や抗精神病薬などは投与量を調節するため粉薬で投薬することも多く、調剤には天秤や分包機といった設備と秤量や分包の技術が必要です。粉薬や水薬、軟膏剤の混合などの調剤を計量調剤といい薬局や病院の調剤室でしか調剤できません。MPには、計数調剤はもちろんのこと、計量調剤を実施するための設備や器具を搭載しており、薬局や病院の調剤室と同等の機能を持っています。
 また、薬剤師は、医師の発行した処方箋について、患者さんにあった内容かどうか、副作用は出ていないか、飲み合わせが大丈夫かなどを確認してから調剤を行います。薬剤師が処方箋の内容に疑問を感じたら、必ず処方医に確認することが法律で義務付けられています。通常は電話などで医師に問い合わせを行います。この問合せを疑義照会と言いますが、通信インフラが破壊される大規模災害では、医師に連絡を取ることも容易ではありません。岐阜薬科大学のMPには、衛星回線を使用して、電話、FAXやインターネットを使用するための通信機器も装備されています。
 このように東日本大震災の教訓から開発されたMPは、2016年の熊本地震の際に、当時、全国に4台あったMPのうち3台が熊本県で活動し、その有用性が認められました。岐阜薬科大学の教員も現地の医療支援で実際にMPを使用し、2017年に全国の大学として初めてMPを導入しました。現在では、全国で約20台のMPが配備されています。
【文責:林 秀樹(岐阜薬科大学 地域医療実践薬学研究室 教授)】
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