TEEP NEWS LETTER Vol.36
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参考文献:「畑村洋太郎(2003).『創造学のすすめ』講談社.」「0から1を生み出す体験の場」をどう作られているかうかがいたいと思います。   0から1を生み出すには専門の分野だけを知れ芦塚ばいいというわけではなく、隣接する分野や全く違う分野の知と出合うことが重要と思っています。 学生には関心を持ったことはスマホで調べるだけでなく、人に会ってみよう、参加してみようと呼びかけています。ある学生はゴミ拾いをしながらジョギングをする「プロギング」という活動に参加したところ、SDGsに関連する部署の方と出会ったりして、プロギングリーダーの資格を取り自分でイベントを企画するまでになりました。学生には異分野の人や専門外の人から刺激を受けて育ってほしいですし、私自身もそうした環境に常に身を置くようにしています。   学部の4年生を対象に学内で架空の患者さん木下を想定し、看護計画を立てて実施させる実習を行っています。ここ最近はコロナの影響で学生が患者さんと接する機会が少なくなっており、この実習は、これまで学習したことと、就職してからのギャップを埋める意味もあります。 学生たちはとても自由な発想でケアを考えます。寝たきりの状態の患者さんをベッドの端に腰かけさせてケアを行うとか。同じ状態の患者さんを現場で知っていたら、怖くてとても考えられない方法です。 ただ、教員が頭ごなしにこれはありえないと否定してしまったら、学生たちから考える力を奪ってしまうと考えます。0から1を生み出す過程と考え、教員が根拠をもって客観的に評価し、さまざまな情報を基に説明していく必要があると考えます。こうした指導は、臨床現場でさまざまな工夫をして成果をあげた経験のある教員でないと難しいと思います。   大学病院では希少疾病の患者さんが来ら小林れることがあります。希少疾病の場合には、治療のガイドラインがない場合もあり、医療者には、英語論文等を精査し、最も可能性が高い治療法を検索して、多職種で議論し、選択する能力が求められます。薬学部では3年間かけて卒業研究を行いますが、卒業研究を通して、研究を行う能力を獲得することができた学生の方が、現場においてエビデンスを探索したり、作り出したりする力が高いと感じます。学生たちには卒業研究をしっかり遂行することが、現場で働く際にも通じると普段から伝えています。   私たちが有料で行っている講習会を受講する笹野方は熱心に事前学習をして来られ、シミュレーションによりさまざまな知識を得て0に近い時点から1まで到達されます。その方に次は教える側、インストラクターになっていただくと1が10になり、10が100になるところまで行けると思っています。こうしたポジティブなスパイラルループを作っていきたいです。   実は私は普段は「0から1」とは逆のことを言っ成田ています。広告や企画といった新しいものを生み出すのは、既存のアイデアの組み合わせだと考えるためです。演習でも1+1=3みたいな形を作り出すことを繰り返しやっています。そのためには芦塚先生のお話の通り、他分野のことも含めた広い情報収集が必要であるということも併せて伝えています。   おっしゃる通り、創造とは要素と構造の組み合山田わせによって新しい機能を果たすものを作ることだと思います。学生たちが経験学習で0から1の機能を創り出そうと思う時には、既存のプロダクト、プロセス、サービスのなかで、要素は何で、全体の構造はどうなっているのかを考えるように指導していくのが良いでしょう。これも概念の力ですね。 また、芦塚先生がおっしゃったように他の分野の知識を自分の分野に当てはめる、自分の分野の知識を他の分野に当てはめたらどんなアイデアが出るかという取り組みも、知識の概念的な移転として大いに参考になると考えます。

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