TEEP NEWS LETTER Vol.36
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小林 亮さん笹野 寛さん成田 亙さん山田 勉さんセ キかといえば既にある形式知をどのように実務に定着させるかを重視しているように思います。 シミュレーションの限界というか、教員が用意した環境下での実習のみでは現場で使える知識として学生に定着しないのではないかと危惧しています。OJTに勝るものはないなかで多職種連携PBL演習をどう位置付けていくかを考えているところです。   医療ではEBM(Evidence 小林Based Medicine)といい、エビデンスに基づいた医療が重要視されています。これは形式知といえるかもしれませんが、EBMを実践するためには、現場における経験値といったような暗黙知が必要になります。また医療を進歩させていくためには、新たなエビデンスを作るために研究を行うことも重要ですが、現場での経験がなければ治療や治療中の副作用に対して、クリニカルクエスチョンを持つことができず、エビデンスの検索や評価することができません。 医療の高度化が進む一方、人口は減少していく中で、入職してすぐ使える知識を持った人材を増やしていくことも必要となります。暗黙知のレベルを高めつつ形式知に落とし込んでいくため、大学での授業や実務実習等を通して、さまざまなシチュエーションに対応できるようフローチャートのパターンを増やすなどの取り組みをしています。 こちらは現場での取り組みになりますが、新入職員が1年目である程度のレベルに達することができるように達成度を評価するチャートを作っています。また3年目くらいから職員は学生の指導にも携わっています。学生に対する教育を行うことは、教える側の職員が知識を深めることに繋がっています。こうしてうまく形式知と暗黙知を繋げられないかと考えています。   それぞれのスタッフの持笹野つノウハウを共有するために私たち救急科ではSlackなどのクローズドなSNSを使って、気軽に情報を共有してお互いに勉強しようということを試みています。 医学教育においては、学生が教わった膨大な形式知のうちどれが実際の治療に必要か分からずトラブルになることもあります。優先順位や判断基準も含めて教えられないかと日々考えています。   次に『未来人材ビジョン』でも挙げられていた   ナレッジマネジメントに力成田を入れ、個人の知識やノウハウを企業内で共有して組織力を高めようとする企業は多いですが、形式知が多くなりすぎて収拾がつかないという話もよく聞きます。笹野先生のお話に近いのですが、情報に埋もれてしまい暗黙知を形式知に変える以前の問題が起こりつつあるようです。 優先順位を付けて整理された情報をポンと渡すだけではなく、個別にコミュニケーションして伝承することが非常に大切だと思っています。   卒業後も職業人として能山田力を伸ばし続けるには、概念的な理解ができるよう指導することがポイントです。 ナレッジマネジメントにおけるSECIモデルでも「概念化」が非常に重要とされていますね。それは、膨大な知識の中から何を教えるかを精選するだけでなく、そこから学ぶべき概念とは何なのかを捉え、「一般化」や「原理」にまで高める必要があるからです。第一次世界大戦の歴史を学んで事実を年表にまとめることにとどまらず、「戦争における手段と目的」とか「国際的な視点から複合的に見る」ところまで到達して初めて、昨今の戦争や紛争といった新しい事象にも応用できる力が身につくでしょう。 事象の本質的な「原理」や「起源」を学ぶことが現場でのパフォーマンスの基盤となります。内燃エンジンについて学ぶならば各部の名称や動かし方を覚えるのみならず、なぜ内燃エンジンが発明されたのか、蒸気エンジンの何が問題だったのかを理解してこそ、自分でエンジンを作ったり修理したりできるようになるのです。こうした「概念化」や「原理と起源」を理論と実践の相互作用にいかすことが、進化型実務家教員の腕の見せどころではないでしょうか。0から1を生み出すために

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