TEEP NEWS LETTER Vol.33
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ゼミ授業の様子   TEEPの指導者の中には、ゼミで社会課題を稲葉解決するためのアイデアを企業に提案しておられる先生があります。教員が依頼書や企画書のチェックを行うとともに、タイムキーパーとなって進捗を確認することが重要だそうです。社会人経験のない学生と、提案を受ける企業側のレベル感を合わせる役割も、実務家教員に求められているのでしょうね。他にも実習で心掛けておられることはありますか?   大学教員になったばかりの頃、競技レベルの葛原高いチームで実習すれば学びが大きいと考え、国内のトップチームに学生を送り込みました。しかし多くの学生が途中でフェードアウトしてしまったのです。トップチームであれば学生にも相応のレベルを求められます。学生にとってはそれが大きな負担でもあったのだと思います。この経験から、現在は学生自身が自分の身の丈に合った実習先を探すことから始めています。実習後、さらに学びたいという学生にはより専門的な実習先を紹介する、という段階を経るようにしています。   あまり遠すぎる目標では学習にならないとい稲葉うことですね。教員として学生の知識や技術に合わせて少し背伸びするぐらいの領域を想定すること、また、自分で探すことは当事者意識が持てる重要な出発の仕方だと思います。   葛原先生は実務経験を基に、学生が学んだ知稲葉識を知恵に変え実践していく力を付ける指導をされているのですね。続いては、教育の分野で幅広い経験をお持ちであり、現在は中京大学にて保健体育の指導方法について教鞭を取られている後藤先生にお話しいただきます。   私は以前高校で保健体育の教員をしておりま後藤した。その経験や生徒たちとの出会いが私の人生を大きく変えました。 教員になって10年ほど経った時、赴任校が国立教育政策研究所の研究指定校となり、3年間の実践研究を行いました。文部科学省の教科調査官から直接指導していただき、国の教育政策の動向なども踏まえた多角的な視点を持てるようになりました。 生徒たちを教えながら、行政のオーダーにも応える実践を繰り返すうちに、自分がまだ知らないこと、学ぶべきことが山のようにあると気づきました。特に当時の私が力不足だと感じたことは、統計的な分析の手法です。これを学び直したいと考えたことが大学院進学のきっかけの一つです。また、その頃に勤務していた夜間定時制高校では、「昼間は働き、夜は学校」という生徒たちを目の当たりにしました。その大変さを自分も経験しながら生徒と向き合いたいという思いもあり、「昼間は学校、夜は仕事」という選択をしました。 大学院修了と同時に教育委員会に異動になり、これまでとは違った視点で自分の成すべきことを考えるようになりました。これまでに学ばせてもらってきたことを自分だけのものにしたままでいいのか、学びの機会を与えてもらった恩は未来ある若者に返していくべきではないかと考えるようになり、大学教員になりました。私が経験してきたことを伝えた学生たちが、どのように成長してくれるのかを想像すると、ワクワクします。 まだ大学で教えて2年目ですが、ゼミや講義で理論に絡めて教育現場での経験を話すと、学生たちは目を輝かせて聞いてくれます。リアルな現場のことをこんなにも知りたいのだと感じると同時に、やはりそれを裏付ける理論と一緒に話すからこそ学習効果が高まるのだとも思います。 また、教員として勤務していた経験を生かし、知り合いの先生方に実習の受け入れもお願いしています。学生に現場で学ぶ機会を作れることも、実務家教員である自分の強みだと思っています。 大学ではさまざまな理論を学びますが、現場では理論に当てはまらないケースに出会うこともたくさんあります。そうした実践での難しさを、私の経験も踏まえて伝え、学生たちに考えてもらうことが必要だと考えています。理論と実践の両方を伝えていく

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