TEEP NEWS LETTER Vol.29
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ています。しかし、そのことによる弊害もまた大きいのです。 その弊害を正すべく、猛反発されながら、「行政革命戦略5つの宣言」と銘打って市役所内の重要会議については発言者の名前を付けた議事録を庁内公開するとか、国や県からの補助金はむやみに予算化しないとか、横並び主義の人事はしないといった施策を実行していきました。 今も三浦市ではこの流れで改革が進んでいると思いますが、行き過ぎた改革によって極端に小さな政府を目指すようになってはいけないと思います。変えるべき部分は変えつつ、行政であればこそ守らなければならない部分は何かを考え続けるバランスが必要だと考えています。   木村先生が大学教員を志されたきっかけについて教えてください。 市役所時代に、明治大学商学部と協働で東京都心に三浦市のアンテナショップを作ったことがありました。市役所を退職してコンサルティング会社を経営していたときに、明治大学の先生から、地域活性に関する実践的な科目を担当してもらえないかと声をかけていただいたのです。 一年ほど講義を続けてみると、学生たちがメキメキ変化していく様子を見るのが楽しくて仕方がなくなってしまったんです。これまでの仕事はいつも不安でどこか自信が持てなかったのですが、教員として学生の成長に立ち会えたときには初めて仕事に楽しさややりがいを感じ、天職だと思えたんですね。 任期付教員として明治大学に8年勤めた頃、関東学院大学から法学部に地域創生学科を作るということでお誘いいただき移籍しました。   学生たちに実務家としての知見を伝える際に心掛けていることはありますか。 物事を論理的に考えるようにと伝えています。事象の変化を図式化・構図化してみなさいと。Aという事象がBに変化する際には何らかのXが触媒として入っているはずだから、その変化を主観に引きずられることなくロジカルに説明できるようにと教えています。 そうはいっても、どうしても図式化・構図化できないこともありますし、そもそも理論だけでは理解できないところもあります。そうした場合には同様な環境を用意して、現場に出るなどして実践してもらう。実践で気づいたことを授業の中で対話を通してまた論理的に考えたりして定着させていくというプロセスこそが、学生の成長に繋がっていくように感じています。そうした現場を用意し、実践をコーディネートするのは実務家が得意とすることです。 また、大学外での経験をいかすという意味では、実務家教員だからこそ大学内で実験的なことができるのではないかとも考えています。例えば学生との接し方です。私は一部の少人数授業では学生に「木村先生」ではなく「乃(だい)さん」と呼ばせています。そして学生をニックネームで呼んでいます。学生と教員の距離を近づけ、フラットな関係にできないかという試みです。もちろん相手に敬意を払うことは大切ですが、伝統的な師弟関係とは異なる関係が作られることで、大学が変わっていくのではないかと考えています。率先してこれまでとは違う教育環境を作っていくチャレンジができるのも、実務家教員の強みではないかと思います。   特に学生の成長を感じたエピソードがあれば教えてください。学生の成長が何よりのやりがい

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