TEEP NEWS LETTER Vol.29
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市役所時代の職場で そこで野村総研の取引先でもあった地域環境計画に転職します。社員5名ほどの小さな会社でしたが、地元住民との丁寧な対話を自治体の計画づくりにいかす仕事ができました。折しも住民参加が高らかに謳われはじめ、ワークショップやパブリックコメントに重きを置いて住民の声を行政計画にきちんと反映させるべき、という時代でした。自分は科学的なシンクタンクの世界から、現場重視のコンサルタントになったと感じました。町の人からいろいろな話を根掘り葉掘り聞いて、政策にいかしていくという経験は、教員の仕事にも通じるファシリテーションの力をつけてくれました。 同じく、データマイニングならぬ「地域文化のマイニング」の手法もこの時期に身についたと思っています。例えば、私が関わっていた神奈川県三浦市はマグロが有名です。でも地元の人たちはマグロよりメトイカというイカを熱心に薦めてくれるんです。ここでしか捕れないイカで、本当に美味しいのはこれだと。その姿を見て「“広い視野を持て”といわれるけれど、よそと比べなくても、自分の地域にあるものに対して持っている誇りこそが地域のエネルギーになっている」と感じました。今の言葉でいうとシビックプライドですね。地元の言葉や食べ物や歴史を誇っている方こそ、地域のために自発的に行動しているし、そうした方々が私たちにくれるアドバイスや、彼らが納得できる行政計画は実効性が高いということが分かってきました。分野を横断する「スーパーゼネラリスト」 一方ではシティセールスやシティプロモーションが話題になり、行政にもマーケティングが必要だといわれ始めてもいました。私は市外のマーケットより、行政の政策は市民志向であるべきと考えていたので大きな違和感を持ちました。しかしマーケティングを学んでみて「インターナル・マーケティング」という考え方もあることを知りました。平たくいえば社外の顧客よりも先に従業員満足を追求するべきという考え方なのですが、これは私が三浦市の現場で感じたことと一致したのです。私は、自治体の外から人やお金を呼び込もうとする、いわば「エクスターナル・マーケティング」を克服して、シビックプライドを醸成するインターナル・マーケティングの理論を構築していく必要があるのではないかと考えるようになりました。 そんな時に出合ったのが地域活性学会です。学会員の方々の専門をお聞きすると、都市計画や経営学に限らず、美術デザイン、心理学、生物学や畜産農業と幅広い分野の方々が地域活性というキーワードのもとに集まっている。これは「学際学」だと思いました。 自分も地域活性学会にインターナル・マーケティングや、内発型の地域形成の研究で貢献できないかと考えました。これらは民俗学・文化人類学・行動経済学・行動生態学・経営イノベーション理論などの理論を借りてこそ、今まさに地域社会で起こっていることを説明できるものです。全ての分野を学ぶことはできないけれど、自分は現場の知見と理論を組み合わせて、分野横断的・セクター横断的に研究と実践を進めていく「スーパーゼネラリスト」という立場を目指すべきではないかと考えました。   三浦市役所での経験についてもお話しいただけますか。木村先生が今、大学という組織の中で果たそうとされている役割とつながっているように思われるのですが。 地域環境計画に勤めた後、三浦市役所の政策経営室長、政策経営部長として地域再生計画の立案や、行政改革、フィルムコミッション事業や物産出張販売事業などに関わりました。コンサルタントとして長く行政と一緒に仕事をしていたのですが、やはり内部に入って初めて分かることがたくさんありました。 行政と企業の論理は全く違います。基本的には行政は官であって統治機構ですから、私は断じて根本論理を成果主義とか市場志向に置くべきではないと考え

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