TEEP NEWS LETTER Vol.27
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受け入れ企業と学生の打ち合わせで「5分、10分を正しく使えない人間が、1日や1年を正しく使えるだろうか」と思いました。それからは雑務もストップウォッチで測り、昨日より時間を短くする工夫を始めました。すると仕事も楽しくなり、上司からも少しずついい仕事を任せてもらえるようになりました。この「振り返り」を大切にする経験、「仕事の報酬は仕事」が、今の私の教育における大きなバックボーンになっています。 その企業では、入社を希望する学生にインターンシップを経験してもらい、その結果によって採否を決定していました。インターンシップに来ていたある学生に、内定を出せないことを伝えたことがありました。涙を流す学生の姿と仕事ができなかった頃の自分が重なり、仕事のできない自分だからこそできることはないかと考えるようになりました。 同時に、その企業は業績が急伸しているベンチャーとして注目されて多くの応募もあるのに採用に至る人の数はわずかという現実がありました。学生たちがやりたい仕事で活躍できる人になれるよう応援することが私の大きな問題意識となり、勤務している企業を退職しました。 起業計画を立てている中で、出会ったのが岐阜県のNPO法人G-netです。中小企業で学生が半年間、新規事業に取り組む長期インターンシップの事業をされていました。半年の間に新規事業を行う、その間で培われるたくましさ、新しい価値を創造する力は、従来型の「知識を与える、教える」という教育のみで培われるものなのだろうか、と考えました。21世紀はグローバル化と技術革新が加速し、知識から新たな価値の創造が求められる「知識基盤社会」と言われています。知識基盤社会で活躍する人物を私は「誰かに何かを与えられる人」だと考えます。そのためには学生たちが「経験したことのないこと、誰かに何かの価値を与えられるように挑戦する」のが何より重要だと当時の私は感じました。その経験によってしか得られない知があると考えたためです。 そして、出身地である愛知県岡崎市で長期実践型インターンシップを行うNPO法人「コラボキャンパス三河」を設立しました。ちょうど岡崎市も市内の企業と若手人材を結ぶ事業をと考えていたようで、市と協働して進めていくことができました。 そのインターンシップでは、私が企業の業務課題を聞き、共同でプロジェクトを考え、学生が参加する、という方法をとっていました。同時に、企業の中で人が育つシステムをどう作っていくかということも話し合います。当時の私の顧客は、基本的には中小・零細企業といわれる規模の会社です。家業から企業へと転換していく仕組みを、インターン生の受け入れを通して作っていきませんかと話していました。小さな企業でのインターンシップは学生にとっても学びが多いと考えています。従業員が3名の会社に入る学生は、その会社の戦力の4分の1になれるんです。自分の行動が会社の変革に直接つながることを実感できる。補聴器販売の会社ではほとんど業界で前例の無かったネットショップを学生が作り、0から半年で280万円を売り上げたこともありました。工具の機械商社では文系の女子大生が社員と協働して4カ月半で2,500万円売り上げたとか、自社の店舗の売上を半年間で4倍増やしたというような、私ではできないような成果も創出されていきました。 大学生のインターンと並行して、子どもたちがお店や銀行や警察など、やってみたい職業の役割を担って「まち」をつくる「マーブルタウン」というイベントも実施していました。小学生から大学生まで、一貫したキャリア教育のモデルを作りたいと考えたためです。私が考えるキャリア教育は、一つは「自分で生きていく道を決める」ための教育。もう一つは「決めた道を走る力をつける」ための教育です。企業に就職することが教育のゴールではありません。社会で活躍できる力を持っていなければ、かつての私のように辛い思いをすることになりかねません。   NPO法人を立ち上げられて数年後に、大学の教員になられました。 岐阜大学が文部科学省の助成事業「「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」」に採択され、岐阜県内の企業と連携して地域で活躍する人材育成を本格的に推進していくというタイミングで声をかけていただき公募しました。私は岐阜大学の「地域企業での経験を大学教育にいかす

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