TEEP NEWS LETTER Vol.25
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は、心理職の裾野の開拓です。学習支援や子どもの権利相談室は、一般的には心理士の働く場所としてイメージされていません。こうした領域で心理士の視点がどういかされるかを、後進を育てる際にいかしたいと思っています。 もう一つはソーシャル・アクションです。心理士は相談室に来た方を支援することに加え、今後はこちらから出かけていく「アウトリーチ」活動や、自ら活動を起こすソーシャル・アクションも必要です。学習支援事業では、名古屋市・春日井市の行政の方と一緒に子どもたちに必要な場を立ち上げました。   中京大学スポーツ科学部の葛原です。私はプロスポーツチーム・企業チームでアスレティックトレーナーとして仕事をしてきました。チームドクター・監督・コーチと連携しながら、選手のサポートをする仕事です。 私はアメリカの大学院に留学し、大学スポーツでトレーナーとして活動するとともに、スポーツ大会でのメディカルスタッフとしても経験を積みました。日本に帰国してからも、プロ野球や企業スポーツチームのトレーナーを歴任しました。 その後大学教員になりました。「面倒見のいい大学」を標榜する私学は非常に多くあります。しかし、教職員が学生のためにお膳立てをし過ぎて学生が自立できないといった状況も散見され、ジレンマを感じてもいます。   名古屋産業大学の今永です。私は信託銀行に勤めた後、不動産会社に転職し、その傍ら市民活動団体を設立し仕事外の時間に活動していました。平日の夜や土日に、学生と社会人がキャリアについて語り合う、座談会のような活動です。これを楽しくて続けていたら、岐阜大学の「次世代地域リーダー育成プログラム産業リーダーコース」を設立・運営するお仕事に携わることになり、インターンシップや産学連携の仕事を始めたことが、実務家教員としてのスタートです。 その後、名古屋産業大学の経営専門職学科で、インターンシップや実践的な経営全般に関連する内容の講義を行なっております。   それでは皆さんに、2つの論点についてうかがいます。 1つは「実務知とは何か、学術知との関係とは」。「実践の理論」を皆さんはどうお考えになっていますか。 併せて2つ目の論点として、「実務知を活用した教育実践指導」についてもお聞きしたい。実務でのノウハウや、文字にできない知をどう教育訓練されているのでしょうか。   私は、学術知は実務知の奥にあるものと考えています。実務で感じた疑問を研究テーマにすることで生まれてくるものが学術知ではないでしょうか。 教育実践指導については、臨床シミュレーションセンターでの経験をお話しします。病院の中で医師が最初に教育を受ける時には「See one, Do one, Teach one.」と言われます。上級者のやり方を見て、自分もやってみて、それを人に教えられるようになれば良いという考え方です。しかしこの方法を実際の患者さんを相手に行うことは医療事故の原因にもなりかねません。そのためどうしても経験が少なくなります。その点シミュレーションであれば何度でも反復して練習でき、エラーが起こっても有用な学びにつながります。 また、シミュレーションを利用した講習会では、知識・技能の普及と教育方法の工夫・改善が同時にでき、教育を通じたインストラクターの自己研鑽にもつながります。「Teaching is learning twice」、教えることはもう一度学ぶこと、という経験ができます。   実務知という言葉を聞いたときに思い浮かべたのが、哲学者の中村雄二郎さんの「臨床の知」です。「科学の知」が論理や普遍性を重んじるものとすると、「臨床の知」は多義性、象徴性、個別性を重視するものです。 私たちが支援者としてクライアントと関わるときに起きる現象は、一度限りの現象であったり、実証性が得られにくいものです。しかし、積み重なる中で見えてくるものがあります。臨床心理学とはそうした「臨床の知」を重要視します。 「臨床の知」はテキストでは学べません。現場のリ実務知を活用した教育とは葛原笹野吉住今永鵜飼

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