TEEP NEWS LETTER Vol.23
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たり、患者さんの負担も少なくスピーディーに対応できるという利点があります。 被災地への医薬品の搬送には警察との連携も必要になります。道路の規制情報を得たり、緊急車両以外は入れない地域もあります。また、事情があって避難所に来られず被災後も在宅で生活を続けている方もいます。行政と連携してそうした方の情報を医療チームにも共有して訪問することも欠かせません。さらに、重症の方の被災地外への搬送が必要になった場合には、加えて自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)との連携も求められます。   TEEPの「減災・医療コース」を、薬剤師である実務家教員が指導する意義をどのように考えられていますか。 平時でも災害時でも、医療に医薬品は欠かせません。ここで「薬剤師法第一条」に定められている、薬剤師の任務を紹介します。① 調剤 処方せんの監査や薬剤の調合、服薬指導に加え、患者さんに薬剤をお渡しした後の長期的な経過観察までが含まれます。② 医薬品の供給 医薬品の安定的な供給も薬剤師の任務とされています。普段は製薬会社で製造された薬品は卸会社を通じて薬局や医療機関に届けられます。災害時の供給体制をどう確保していくかも考えなければなりません。③ 薬事衛生 実は薬剤師は大学で環境衛生についても多く学んでおり、保健所でも薬剤師資格のある公務員が多く活躍しています。食中毒の予防や水質検査に携わるには、薬学の知識が欠かせないためです。 熊本地震の際には水質検査や避難所のCO2濃度の測定を薬剤師会が担当しました。東日本大震災の教訓を元に、災害時の医薬品の供給や薬剤師の適正な配置、避難所の環境衛生についても薬剤師が行政に助言する「災害薬事コーディネーター制度」を定める自治体が増えています。熊本県ではちょうど熊本地震の前年から制度の運用が開始されており、避難所に派遣された薬剤師が測定したCO2濃度に基づき換気のアドバイスをするなど、避難所のリーダー的存在となって活躍しました。 医療はエビデンスをもとに実践の内容を改善していきます。それは災害医療であっても同じです。また、医療現場や被災地での経験やデータの分析と研究を行い、その結果を現場にフィードバックしていくことの繰り返しにより、各職種の専門性を高めていくことに貢献できるという点に実務家教員が期待されているのではないかと考えています。   「減災・医療コース」の多職種連携PBL演習では何を目標として、どんな内容に取り組む予定でしょうか。 薬学部の研究でも重視されている「クリニカル・クエスチョン(現場で抱く疑問)」を「リサーチ・クエスチョン(研究テーマ)」として構造化していく経験を学ぶ演習としたいと考えています。「災害時にはこれが無い→こうすれば、医薬品が供給できるのではないか?」と仮説を立てて実証してみるようなことです。こうした研究に向かうときのマインドを持っていると、薬剤師としての普段の業務上の課題も解決していきやすくなります。 具体的には、演習の前半には実際に被災地で活動した人の話を聞き、現地での工夫や連携の方法を学びます。その後、「モバイルファーマシー」が実際に被災地で活用できるか、という実証実験の研究を体験できる実習を考えています。臨床と研究の往還で課題解決を実務家教員として病院で学生指導

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