TEEP NEWS LETTER Vol.23
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   問題が生じている「現場」にアプローチしていく学問分野なのですね。 私は東日本大震災、熊本地震、西日本を中心に発生した平成30年7月豪雨といった災害の際に薬剤師がどのような役割を果たしたかを調査しました。また、現在の職場である岐阜薬科大学の教員が被災地の支援に赴いた際の経験も研究に生かしています。 東日本大震災では被災地へのあらゆるライフラインが切断され、必要な人に必要な薬剤が届けられなかったという、宮城県薬剤師会の強い悔恨がありました。電源や冷蔵庫、清浄水タンクなどを備え、被災地でも調剤作業と医薬品供給を行えるようにした車両が、今回の連携PBL演習でも扱う「モバイルファーマシー」です。熊本地震の際には3台が稼働し、その有用性が確認されました。 また、モバイルファーマシーは災害時以外にも活躍の場を広げることが期待されています。薬局のない過疎地域や、国の方針でも進められている在宅医療の現場でも活用できるのではないかともいわれています。岐阜薬科大学でも災害用車両として導入しましたが、普段はこうした研究や教育のために活用しています。 病院勤務の薬剤師は、医師や看護師と共に病棟の患者さんのもとを訪れ、より良い処方を提案していました。また、病院に蓄積されたエビデンスをもとに研究を進めたり、他の医療職と協同で薬物治療のガイドラインを作成するといったことも行われていました。一方、以前の町の薬局は主にOTC医薬品、いわゆる「市販薬」を販売する所であり、他の職種との連携や研究活動を行う薬剤師は少なかったと思います。 しかし近年、院外処方箋の普及や在宅医療の推進に伴い、訪問診療を行う医師や看護師のように患者さんの家を訪問して活動する薬剤師が増えています。患者さんの病状や生活状況に合わせた剤型や処方を医師に提案することも、薬局の薬剤師の大切な役割と考えられるようになってきました。将来的には在宅医療の経験やエビデンスをいかして研究も行える薬剤師を育てていきたいと考えています。   薬剤師以外の職種との連携がますます求められているのですね。 在宅医療では他の医療職はもちろん、介護職との連携も重要です。医療者は介護を知らず、介護職は医療が分からないというのが現状です。急激に進む高齢化社会を支える多職種連携の実践と、それを支える研究の両方が必要とされています。 薬局の薬剤師は、地域住民の生活に近いところに居られることが強みです。最近たくさんできているドラッグストアでは食料品や日用品も扱っていることがほとんどですから、毎日のように訪れる人も多いでしょう。薬剤師はちょっとした体の不調や介護の悩みを相談されることも少なくありませんから、医療と介護のどちらの知識も持っていなければなりません。 私たちも、寝たきりの状態にある患者さんの口腔内のケアに使える食品の開発や検討を介護施設と一緒に行っています。また、歯科医師会との共同研究も進めています。   災害時には、また違った他職種との連携も求められるのではないでしょうか。 熊本地震の際には日本栄養士会の栄養士さんと一緒に被災者の方の相談を受けました。同じ「便秘」という症状に対応するにも、薬剤師と栄養士ではアプローチが変わるのですね。保健師さんともチームを組んで、発熱症状のある方を医師に診察してもらうか、市販薬で対応すべきかを検討しました。多職種が連携して取り組むことにより複数の解決法を検討し薬剤師に求められる役割の変化日本政府の国際緊急援助隊医療チーム隊員として被災国の病院支援調剤室では他国の支援薬剤師と連携

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