えていうと「ハンガー掛け」のようなものです。新しい事実に出会ったときに、概念的理解があれば「これは冬物だ」「これはまだ着ない上着だ」とクローゼットを整理するように、どこに分類して考えるべきかが分かります。これがないと、とりあえず衣装ケースに投げ込んで終わり、ということになります。「学習の転移」を促すには、頭の中にハンガー掛けを作ることを意識的に行う必要があるのです。ただ、これは実際にやってみないと身につきませんし、一人では難しい時もあるので、アクティブ・ラーニングが求められているわけです。 このようなアクティブ・ラーニングを実際に開発するためには、学生たちを「深い理解」にいざなう学習サイクルを授業に組み込む必要があります。ここでは、その参考となる「CIERモデル」をご紹介しましょう。 まずはコンフリクト(Conict)を生じさせます。対象を理解できないとか、アプリがなぜこの動きをするのか分からない、という状態です。次に、その解決を図るための知識やスキルを学びます。これが内化(Internalization)です。その後、内化した知識を基に問題の解決を行います。外化(Externalization)です。最後にリフレクション(Reection)により、プロセス全体をふりかえり学びにつなげるという流れです。 この図で大切なのは、内化と外化の往還です。ここを往還させることで、借り物の知識が「わが物」になります。聞いたばかりの知識でも、目先の試験の問題は解けるかもしれませんが、「新しい金融情勢の変化」に対応できる程度の概念的理解に到達したいと考えるならば、内化と外化を繰り返す授業を設計しなければなりません。CIERモデルとは、内化と外化の往還により転移可能な概念的理解を確実にするためのものです。 ちなみに「コンフリクト」とは、これから学ぶテーマに対するものだけではありません。PBLの場合には、ともに取り組む仲間や、多職種連携における他の職種との連携自体がコンフリクトの原因になることに特に注意してください。 以上を前提に、多職種連携PBLを設計するポイントをお伝えします。優れたPBLには必ずこの6つの特徴があるとされています。① 駆動質問(Driving Question) 現実の世界と結びついており、学習者が本当に問題だと感じられる問いを提示します。 駆動質問は、アンカーイベントと組み合わせるのが理解を深める一つの方法です。たとえば感染症の拡大をシミュレートする体験をするアンカーイベントがあることで、「親友を病気から守るには?」という駆動質問の意味を実感でき、イベントで得た驚きやハッとした経験を振り返り、関連付けながら考えることができます。② 学習目標 大学で授業を行う以上は、その学部の学位プログラムにおける学習目標(ディプロマ・ポリシー)を確認してください。その上で、授業の中で学部が目指すどんな能力を身につけさせるのかを考え、プロジ「内化」と「外化」を往還するCIERモデルPBLに重要な6つの特徴
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