あったのかもしれませんが、本来は両者が結びついていくべきです。そうした意味で、両方を経験している人間として広く一般にものを書いていくことも大事な活動と考えています。 両方を結びつけるために気を付けている点はありますか。 広く一般にということでは、なるべく分かりやすく伝えることを心がけています。一方で理屈や理論も重要ですから、そのバランスは取りたい。経済誌の記事を執筆する機会があるのですが、その点をいつも悩みながら書いています。もう一点加えるとするなら、情報発信をする際には、自分が伝えたいことを伝えられるメディアであるかどうかは意識しています。 ここまでは主に学内の研究、教育についてお聞きしました。次に大学の外との関係についてお聞きします。産学連携や社会貢献はどう担われていますか。 実は、今の社外取締役になった企業は、ゼミで学生が東海エリアの企業分析をするために訪れたうちの一社でした。それをきっかけに声が掛かり、個人として引き受けているので、自分の中では産学連携というよりコンサルティング活動を続けているという意識ではあります。経営学に関わる大学教員としてこうした実務に直結した仕事ができるのはありがたいと思います。 実務家教員が第一線から離れ大学教員が本業になると、実務家自体には日常であった日々変化する実務に向き合う仕事と異なるため、それまで持っていた情報がどんどん古くなってしまいます。社外取締役のような大学外での実践的活動は、実務の最前線に触れ続け、新しい知見を蓄積する機会になりますか。 社外取締役としての仕事は、自分自身の実務と学術の経験を活かしてその企業の経営に貢献することが第一義であるべきです。第二義として自分自身の知識のアップデートがあるかもしれませんが、あくまでも価値を提供することが主目的であることを忘れてはいけません。ただ、確かに現場を離れてしまうと知識や情報は古くなってしまいます。そこを補うために学外での仕事は有効です。そこで得られた知識を教育にフィードバックしていくことも、学術と実務のブリッジ役としての実務家教員の重要な役割といえます。 最新の知識や潮流は陳腐化していくものなので、アップデートが必要です。一方で物事の考え方といった自分の「引き出し」みたいなものは、それほど大きくは変わっていかないので、長期にわたって使っていけるのではないでしょうか。 教員になってからも絶えず意識してブラッシュアップしていることや、新しく取り入れたりしている学び方などはありますか。 今、私が学部で担当している教育の領域は会計とファイナンス。それを担当している教員は私1人ですので、極めて広い範囲をカバーしなければいけないことになります。実務で扱ったことがない領域もあります。だから、特別なことではないのですが、新聞記事をケースとして使えるかどうかという視点で読み込むようになりました。新聞などの記事をケースとして講義で使用する際には、その記事の背景にあるものを推察し、思考を深めさせるようにすることが大事。その思考の訓練をリードしていくために、実務家教員は、過去の経験を踏まえた洞察力を発揮できるのではないでしょうか。 さらに社外取締役として、社内の人たちの悩みを聞き、一緒に新しい仕組みを考えたり、作ったりもしています。こうした経験も、私の「引き出し」の中身である方法論と突き合わせて昇華させながら、教育の現場にフィードバックしています。知識や情報更新しながら「引き出し」大事に社会人に向けたビジネス書も執筆している鵜飼矢部鵜飼鵜飼鵜飼矢部矢部矢部
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