TEEP NEWS LETTER Vol.20
2/4

期の視点で人材を育てていけないか。そう考えたときに、大学教員という選択肢が浮かんできました。   その際、仕事と両立しながら、どのように準備されたのでしょうか。また、その後の展望はどのように描いておいででしたか。   在職中は忙しくて準備はできませんでした。博士課程に進むにあたって、どの先生の下で研究をするか、実際に相談しに行くなどはしましたが、入試前に会社は辞めた方がいいと思いました。そこで上司に退職を申し出ると、「まだ合格したわけではないのだから、休職にしたら」と助言を受けました。非常にありがたいことで、実際に3カ月間ほど休職して進学準備に集中できました。無事に合格して2005年から3年間、大学院へ。その後、教員に転身しようと考えていました。   実務家としての強みはどんな面で活かせましたか。実務家教員になってからのやりがいはどんなことがありましたか。   博士課程の頃から、実務でやってきたことをどう研究の体系に乗せていくかを意識していました。実務家教員の強みは、理論に対して実務の経験を結びつけられること。講義などでは説得力が増して教育上の効果があると言えるでしょうし、研究上も仮説の設定などの面でアドバンテージになると思います。 例えば、私の専門分野で言うと親子会社間のM&Aについて教科書的な仮説を当てはめることもできますが、実務を経験した人間なら「現実には親会社はこうするだろう」という現場を踏まえた仮説を提示できます。   それは、ある会社で一仕事以上を成し、経験に基づくものの見方が確立されており、かつ、応用もできる実務家だから可能になることですよね。1年や2年働いていましたということではなく、かといって、長く働いたからよいわけでもなく、受動的な仕事を繰り返してばかりいては実務家教員とは呼べないかもしれません。   はい。同じように考えています。その一方で、私の経験で言えば、採用時に「研究領域はどこ?」と聞かれると、絞れない面もありました。やってきたことがコーポレート・ファイナンスなのか企業会計なのか経営戦略なのか…実際はかぶっているところも多々あります。採用する側が何か一つに絞ってほしいとなると、必ずしも実務を求めていないケースもあります。そこには、戸惑いや葛藤がありますね。1つ目のポストを得るときは難しかったです。採用する側は科目適合性を考えますが、一方で実務の人間からすると職能や技能は独立して存在するものではありません。アカデミックでのポジションに就こうとした場合、そうしたギャップもあると当時は感じました。実務家のやりがい・アドバンテージと戸惑い・葛藤は表裏と言えるでしょう。 私がコンサルティングをやっていた頃は、実務に身を置いている人たちは学術の書き物をあまり読まない、逆に学術系の人たちは実務系のものを読まないという傾向がありました。お互い相容れない面が経験と理論を結びつけられるのが強み講義では実務での経験と理論の結び付きを重視している鵜飼矢部鵜飼矢部鵜飼矢部

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る