今回、TEEPでは現実が激しく変化し、大学と実業界の間にある「段差」の質も変化しているという認識で出発しています。実務家教員がその段差を埋め、解決に結びつけるための「現実」とは何でしょう。 日本の人口構成を見ると、少子高齢化で労働力が足りなくなります。この人口の推移に伴って生じるさまざまな問題を、現実として直視しないといけません。 現代日本が抱える精神の問題は鬱(30~40代)や心身症、不登校、いじめの問題、児童虐待など、子どもから大人まで幅広くあります。孤独ほどストレスを感じるものはなく、田舎でも都心でも高齢者の孤独死が見られます。最近では老人虐待もありますし、異文化の人々との共同生活もストレスになり、コロナ禍がそれに拍車をかけている状況です。 そうした現実を直視する方法論といいますか、学術中心とは異なる研究方法を実践してきた実務家ならではのアプローチや方法とは。 自分自身も変化していく存在です。そのなかで、自分が勝ち得た経験は何か、自分の力量を見極め、自分が何の仕事をするのかを考えるべきです。地域に出かけて行き、研究は足で稼ぐものです。お金はかかりますが、そこは研究費などで賄わなければいけません。 それから、ある種のヒューマニズムみたいなものは持った方がいい。社会のなかで自分に何ができるのか。私は2004年の新潟県中越地震の際、現地の人たちと一緒に被災者に寄り添う支援活動をしました。大学に帰って他の先生たちに「困っている人が目の前にいるんだ」と言っても誰も動かない。しかし、学生はついてきました。学生たちは現場のことを伝えると、目を輝かせて見聞きしてくれました。教師は見たことを伝えようとするべきです。 現実との距離を「目測」できないと、大学の教壇に立ってはいけませんね。広い意味で地図を描けて、それぞれを解決し、一緒に探索しようと学生に呼び掛けなければ。 ただ現場に行くだけでもダメですね。戦略的な絵空を提示して、それを活かせるような教育をしないと。 私は2007年、JICAの関係者から、ベトナムでの特別支援教育に関するボランティア活動の誘いを受けました。重症障害児に対する教育指導方針や指導の仕方に関するもので、現地に行って動作法を紹介しました。 私はヘビが嫌いなので、最初はベトナムなんて行きたくなかったんですが(笑)、翌08年には、ダナン現実を直視し、自分と社会を変えるベトナムでの交流が大学間事業に発展集合研修方式のストレスリダクション法で効果が見られた電力会社の一コマベトナム・ダナン大学で行った重症障害児に対する教育指導研修の一コマうつ吉川吉川鵜飼鵜飼吉川鵜飼
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