図2図3ネットの中で教育者として関わるということであれば、精神的な意味でも場所が変わるといえます。 つまり、これからのグローバル経済と情報社会を考えると、単に自分のやってきたことをリフレクションするだけでなく、これから行こうとする社会について知らない多くのことの学習が求められます。「成熟した大人としてステージを次から次へと飛び移り、ドラマそのものの脚本を書き換える劇作家のようになる」ことが期待されているのです。 社会空間はゲームに類似していて、プレーヤーは特定の知識や価値観、ルール、儀礼、コード、概念、言語、法律、機関、対象に慣れ親しむ必要があります。領域を超えて移動したり、不慣れな文脈に柔軟に適応したりするためには、「何かを知っている」ことよりも「どのようにするかを知っている」ことが必要です。大学の教員になるには、大学について知るよりも、大学教員としてどのように動くのか、その「動き方」を知らなくてはいけない。大学がどういう考え方で動かされ、その中の構成員はどんな考え方で動いているのかを理解しなければならないのです。 今の大学のあり方を左右する社会変動として、1つは「社会のグローバル化と市場化の進展」があります。国民国家を超える流動や展開があることで、大学教育もグローバル商品となり、意思決定が欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)など超国家組織へ拡散していくため、国境を超えて、大学教育も効果を測定し、学歴や学位の形で明示しなければならない時代になっています。 2つ目は「大きな政府から小さな政府へ」。これは国民の自助努力や市場競争原理を重視する考え方です。公教育にもお金が回らないため、規制緩和と引き換えに政府や公的資金に頼らない改革を要請されます。そこから「教育」重視型大学と「研究」重視型大学への分化と、大学の多様化も進んでいます。 それらを踏まえて、大学改革の基本的な方向としてまず求められているのは「大学経営の健全化」です。大学も健全経営しないと倒産や統合、合併の危機に陥り、資金を確保するための自助努力や合理的・効率的運営が求められます。 次に求められるのは「増大する利害関係者のニーズへの対応」。顧客である学生のニーズに対応したカリキュラムを考え、産業界の労働力需要や外部資金など、市場との関係を改善し、第三者評価に基づく競争的な公的資金を獲得していかなければなりません。 そして「大学多様化の一層の進展」もあります。隙間(ニッチ)志向の大学は増加していきますが、そうなると専門学校とどう違うのでしょう。その反作用として、教育の質の保証や内容の標準化が大きなテーマに挙がってきます。 学校教育の社会的目的は、図3のように政治的側面を持つ「A 民主的平等」と、市場的側面を持つ「B 社会的効率」「C 社会移動」の3つが関係しています。Aは「教育は経済の道具ではない」という教育学者の視点、Bは「今の学校教育は仕事の役に立たない」と社会空間はゲームに類似している社会変動と大学改革の方向性
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