デザインプロデュースコースが重視しているのは、企業や自治体、もしくはマーケットや社会全体を舞台に、問題を発見し、正しい問いを立てる力です。企画から実施までのプロジェクト全体を広い視野でプロデュースするために、「コミュニケーション能力」「プレゼンテーション能力」「企画実行力」など、「何をデザインすべきか見極め、実現に向けて動かす力」が身につくプログラムを構成しています。 (冨安教授・談) デザイン教育は単純な造形教育から、意図したイメージがよりよく伝わるように視覚化したり、使いやすさを追求したりと目的を持ったものに変わってきました。私も企業ブランドや商品パッケージのデザインを通してイメージの「見える化」を追求してきました。しかし、それもこの10年でさらに変化しています。例えば、単に「使いやすい」ものではなく、「使いたい」と思うものは何なのか、「楽しいから触りたい」といった行為はどこから発生して、それを“企て”として提供できるか…。従来のデザインの定義が広がり、今までのやり方ではカバーできないことが多くなって「どうするの?」という感じだと思います。 冨安先生たちがデザイン学科に「デザインプロデュース」領域を立ち上げたのは、そうした背景があったからですか? はい。デザインをプロデュースするとは、これをデザインするべきだと視点を提案したり、問題を設定したりすること。最初はちょっと変な名前かなと思いましたが、大阪芸術大学にも同じ時期にデザインプロデュースコースができていました。やはりデザインの定義が広がる中で、それに対応できるデザイナーが必要とされている表れなのでしょう。 実際の教育プログラムとしては、デザイン分野でよくある「こういう家電を考えなさい」といった課題は出しません。学生を現場に直接行かせて、そのパートナーに何か提案をさせます。教員側は何をしろという指示は一切出さず、何をするべきかを見つけろと言います。 学生が中間でプレゼンテーションをすると、相手からは「そんなものいらない」なんて反応もありえる。それをフィードバックして最終的な提案をする。例えば、日進市の福祉作業所には「徒歩10分圏内の常連さん」が必要だから商品の移動販売をしましょうとか、「宣伝部」を作って宣伝しましょうなどの案が出ました。前期と後期で相手を変え、2~3年生の2年間で4タームを経験させます。 すごいですね。それは個人ワークですか? チームワークですか? 最初は個人でやらせますが、だんだん考えが似てくる学生も出てくるので、やんわりとチームにします。ただ、教員はプレゼンでもできるだけ後ろに立って、学生にしゃべらせ、仕切らせます。「放牧スタイル」と呼んでいますが、学生を自由にさせつつ、崖から落ちたら困るので教員は“見えない柵”になるようなやり方です。教員側の「型」作りが課題鵜飼鵜飼演習パートナーである就労支援施設の商品(ランチボックス)を検討冨安冨安冨安冨安裏面へ続く
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