TEEP NEWS LETTER Vol.13
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福島SBフェアで学生が試作製品「塩レンガ」をプロモーション新規事業の反応を探るため街頭インタビュー調査生かして、大学を実社会のニーズを踏まえた課題克服の社会実験の現場とし、企業などから要求される水準で課題解決ができる学生を育てられると考えました。 ところが、1カ月ほどで疑問が湧いてきました。前述のように私自身が経験し大切にしてきた部分と、当時用いていた大学のテキストに大きな乖離があったからです。「ベンチャービジネス論」講義の目的とは、研究成果を教えることなのか、将来ベンチャーを立ち上げる起業家の素地を育むことなのか。自分が伝えるべきものは何なのか…とても迷いました。今、私がTEEPプログラムの説明で盛んに強調している実社会と大学との「段差(ギャップ)」がそこにありました。 段差を埋めるために私がしたのは民間企業やNPOにパートナーを見つけることでした。ポイントは次の3点です。第1に、自身の前職と起業プロセスでの経験を振り返り、決断を迫られた状況設定や失敗から学ぶプロセスを疑似体験できる教材開発。第2に、真剣勝負の経験を積める機会づくり。第3に、教育支援者としての姿勢、心得、技能を自ら開発すること。 今も理事を務めているのですが、名古屋に本部を置くNPO法人起業支援ネットを通して、文字通り起業家を支援する活動に関わり始めました。起業支援のフレームワークと支援者としての心得、方法論を私自身が学び、それを踏まえて私が大学でやるべきことは、目の前の学生に起業家としてのマインドセットとスキルセットを身に着けさせることだと確信したのです。 そこで、前任校では次のような「アントレプレナーシップ教育の履修モデル」を構築しました。 ①経営者との対話を通じてマインドセットの違いを理解する導入科目、 ②自分自身の企画や事業計画についてペアインタビューを通じて見える化するアクティブラーニング科目、 ③イノベーション、ベンチャービジネス、アントレプレナーシップとは何かを理論で学ぶ講義科目、 ④学生が自身のアイデアを出発点に企業と一緒に商品開発をする出口科目として位置づけたPBL科目(「バーチャルカンパニー」を通じた起業家育成プログラム)です。授業は実務家教員である私と、組織学習論を専門とする学術基盤教員の2人が、相互に補完する関係で組み立てました。 そして、将来ベンチャーを目指す高校生、バーチャルカンパニーで活動する学生、創業した卒業生や社内で新規事業を担う卒業生までが参加し、学び合う「共育」環境づくりを企画し、愛知学院大学版「大起業市場」として実現しました。 バーチャルカンパニー(VC)プログラムでは、2005年度から2018年度までの間に、学生による累積VC数は約66件(累積参加学生数は約350人)、協力企業数は延べ66社に達しました。学生による活動成果は、最低2段階で第三者評価を受ける教育支援体制を組み立て、私自身はメンター(指導者、助言者)となり、日々の学生の活動を見守りました。その成果の一部は、天然成分のせっけん作り、2011年の東日本大震災後は津波被害を受けた被災地の塩害土壌で塩レンガを製造するものまで、用途開発、商品開発、事業開発などのプロジェクトを含むプログラムに発展。分野は環境だけでなく看護やNPOとの関わりから新しい教育模索かい りきぎょういちばだい

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