TEEP NEWS LETTER Vol.13
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 私は大学時代に中小企業論を学んでいました。ゼミの恩師である清成忠男教授は政府系金融機関から転身し、「ベンチャービジネス」の概念を日本で初めて提唱した先生でした。同時期の他の教授とは視点やアプローチが異なっていました。今思えば、ゼミの恩師はまさに実務家教員で、「私は学者ではないけど、研究者だ」というフレーズが今でも忘れられません。これは社会的イシューを探究し続ける価値を私たちゼミ生に強調されていたのだと、今になって真意を理解できるようになりました。恩師のイシューをキーワードで追えば、「中小企業の構造変動」、「ベンチャービジネス」、「(地方の時代につながった)地域主義」、「起業家活動(アントレプレナーシップ)」など、現在に至るまで、学術的にも実務的にも重要な探究領域です。 私も「こういう先生になってみたい」と思い、大学院に進学しました。しかし、そこで大きな壁に直面します。経営や地域活性化に関する最新の理論や現象をテキストで学べば学ぶほど、なぜそれが発生しているのか具体的にイメージできるだけの知識や経験が不足していると実感したのです。仮に将来、研究者になるにも実社会を分からなければいけない。そう痛感してそれ以上の進学はしないと決め1年間、交換留学でロンドンへ渡り、長期インターンシップのような形をとり、研究対象の一つであるサウスバンクテクノパークで成果を上げ、当時は個人でビジネスインキュベーターを運営し、地域開発コンサルタントとしても活躍していたジェフ・ジェファーズのかばん持ちをしながらアクション・リサーチを行いました。帰国後は修士論文を書きつつ、就職活動に励みました。 就職したのは対金融機関向けの調査事業や対政府向けのシンクタンク事業を手掛ける調査会社。日系企業現地法人のローカライゼーション調査、金融商品開発の基礎調査、店舗マーケティング調査、地方自治体や中央官庁へのシンクタンク業務などを担いました。それら複数の専門領域には別々のプロ 本ニューズレターでは、現役の実務家教員がどんな思いで、いかなる活動をしているのかを発信してきました。今回はTEEPコンソーシアム実施委員長としてプログラム整備を進める鵜飼が、自らの経験と大学教育に懸ける思いを伝えます。進化型実務家教員への扉私と実務家教員鵜飼宏成氏名古屋市立大学大学院経済学研究科 教授“実務家型”の恩師に憧れ社会人にOJTで調査事業全体の技能習得文部科学省「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」進化型実務家教員養成プログラム13vol.News Letter 中核校:名古屋市立大学連携校:岐阜薬科大学 高知県立大学 中京大学

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