TEEP NEWS LETTER Vol.12
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初めてのセミナー(白石:中央)介護向けメンタルヘルス研修(白石)    同じ看護職でも、白石さんは救急の現場での気付きからその後起業という道を選択され、木下先生は国際協力から再び国内に戻られた後教育分野に転身をされていくわけですね。   私は大学で看護学を学んだものの、学問領域としての看護学に十分確信が持てませんでした。海外でも公衆衛生の分野において経験を積むこととしました。ところがしばらくして、このままではただの頭でっかちになってしまうと気付き慌てて帰国、都内の専門医療機関で一人一人の患者さんとじっくり向き合う仕事に就きました。    木下先生は、「コーディネーターナース」としても関わりを深められたと伺っています。   はい。当時の職場にHIV(エイズウイルス)専門の治療機関があり、HIV感染者の看護にあたっていました。HIVは今、薬でウイルスの量を減らせるようになっています。薬を飲むのは1日1回、数秒の間です。それ以外の大半の時間、患者さんは日常生活を過ごしていますが、そこで何か問題があれば、せっかくの治療が継続できなくなります。治療を継続してもらうためには日常的に看護師の果たす役割が大きく、私も、家族からの相談、もめごとの仲裁にまで関わりました。 患者さんは治療以外の時間、社会のなかで普通に生活しています。一見、病気と無関係なことも、治療の進め方と密接に結びついていることが分かりました。 そうして日々患者さんから学ぶうちに、看護に自信がもてるようになりました。次の世代へと経験を伝える仕事に就こうと思ったときに縁あって大学教員の道に進むことになったのです。    患者さんが深い孤独を抱え、孤立して治療を放棄しないよう看護師が行う総合的なサポートは大きなものですね。白石さんは、起業に至るまでに社会人大学生としても学びを経験されています。そのいきさつや背景を教えて下さい。   救命の現場には自傷した人や子どもも来ます。そうした人には単なる救命治療だけでなく、もっと根本的な支援が必要なのではと思いました。せっかく命を取り留めても再び、という例もあり医療だけでは困難な事例を経験しました。もう一つ、普段は温厚な看護師が自傷する人を前にすると時に攻撃的な言葉を使ったり、差別的になったりしてしまうという問題もありました。そんな心の動きの答えが、心理学にあるのではと、大学の心理学科に入学したのです。 実際に学んでみると、医療現場に有効な心理支援というものが分かり、その支援を届けたいと思いました。ただ、当時は名古屋市で学んでいましたから、実家の豊川市や同僚のいる大阪などにまで広範に届けるにはどうしたらいいのだろうと考えました。広く届けるには何かしら計画が必要だろうと、他学科で企画論と事業計画論を履修。そこで作った事業計画書を担当教員に言われるまま外部のビジネスコンテストに出したら優勝してしまい、会社を作らなければいけないことに(笑)。 実はその教員こそ、TEEPの実施委員長である鵜飼教授でした。当時、本当に戸惑いましたが覚悟を決め、職場のメンタルヘルスなど従業員支援プログラム(EAP)を提供する会社を起業しました。白石木下木下小木曽小木曽小木曽治療以外も患者に向き合う 心理学の学びから起業へ[木下][白石]

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