TEEP NEWS LETTER Vol.11
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企業内の教育力の向上が見込まれます。中堅・ベテラン社員が実務家教員になることで、企業全体のモチベーションや社員の能力向上にもつながる取り組みと聞いています。 本シンポジウムが実りあるものになり、実務家教員の認知度が向上、あるいは重要性が認識されるように祈願いたします。▶基調講演/鵜飼宏成氏(名古屋市立大学 副理事・大学院経済学研究科 教授/TEEPコンソーシアム実施委員会 委員長) 大学における実践的な学びの場の創出と人材開発が必要とされる時代において、実務家教員養成は極めて重要な取り組みの一つです。そこで私どもは、進化型実務家教員についてさまざまな取り組みを進めたいと考えております。実務家教員とは、おおむね5年以上の実務経験と高度の実務能力を有する大学などの教員と定義されていますが、さらに「実務家として『一仕事以上を成した』上で、大学の職に転じた教員」と考えています。基礎理論の応用経験があり、組織を動かす経験(組織内マネジメント経験)や全社的な視点に立った仕事の経験がある履歴の持ち主です。 現代社会では2種類の「段差」を意識するべきです。1つ目は、教育機関と仕事の世界の段差。2つ目は、産学連携や域学連携に向け私たちが置かれている段差。この2種類の段差を解決するために、段差の特性を理解し、解決のための方法を生み出し、ステークホルダーと共に人材育成と問題解決を実践できる人材が重要です。 昨年度、私たちは実際に活躍されている実務家教員にどのような特徴があるのかを探るためインタビューによるコンピテンシー(高業績者の行動特性)調査をしました。現在、活躍領域などを分類し、実務領域診断カルテや実務家教員養成プログラムに生かしながら「産業界と大学の架け橋」をどのように構築していくか検討しています。 実務家教員は一方通行ではありません。実業界から大学に来られ、そこからまた実業界に戻っていくというルートも存在しています。大学側にはアカデミック教員との相乗効果を発揮できる体制や、実務家教員を適切に評価する仕組みの構築が求められています。こうした課題を洗い出しながら、プログラムを一層、充実させてまいります。<ファシリテーター> 小林直三氏(名古屋市立大学 副理事・大学院人間文化研究科 教授) 第2部では産学共同での人材育成の在り方や、実務家教員の活躍の場をどう広げていくかについて考えます。まずは企業側の取り組みや産業界の現状などについて3名の登壇者に報告していただき、その後、実務家教員も加えてパネルディスカッションをしてまいります。<登壇者> 奥村隆一氏(株式会社三菱総合研究所 キャリアイノベーション本部 主席研究員) 日本企業は就業者の人的資本形成において、3つの課題を抱えています。1つは人的資本の陳腐化、2つ目はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が有効に機能しなくなってきていること、3つ目は就業意欲と生産性の低さです。背景にあるのは自らキャリアを築く意識や支援する環境整備の不足だと考えています。 こうした課題解決の突破口として、「知の深化」と「知の探索」を同時に進める「両利きの人的資本形成」や、専門性を連続的にずらしていく「連続スペシャリスト」などの考え方が重視されています。これらを進化型実務家教員に絡めて整理すると、企業からは社員と組織の同時成長につながるという視点が、就業者からはキャリアが会社から与えられるものでなく自分で築くものだという意識転換の視点があります。 そして大学にとっては、単に社会人を送り出すだけでなく、労働市場内の人的資本の再構築や活性化にまで着目した教育が重要な社会的使命になっていきます。つまりフローからストックへという視点。そのカギを握るのが進化型実務家教員でないでしょうか。<登壇者> 三輪真資氏(株式会社パソナグループ 成長戦略本部 HR Tech チームマネージャー) 「企業採用担当者が期待する社会人基礎力」のアンケート調査につい▶パネルディスカッション「産業界から見た実務家教員の可能性」

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