実務家教員としての経験に裏打ちされた理論を説明は、私にとって非常に重要です。東京都市大はもともと工業系の大学ですが、今は全学横断的な拠点もあり、違う領域の先生と交流して刺激をもらえます。理系の先生たちはたくさん実験をしたり、研究論文を出したりしますから、できるだけアウトプットしなければと思わされます。実務家教員はアカデミックの世界と現場・現実の世界を橋渡しする立場。学生にも、実社会で起こっていることにアカデミック・アプローチをぶつけてみる経験をさせようと思っています。 学生を積極的にコンペなどに参加させるのも、経験を深め、実社会とのつながりをつくるためですか。 うちのゼミでは企業や行政への提案をよくさせています。また、一昨年から学部1年生を「キャリア・インカレ」というビジネスコンテストに参加させており、2年連続決勝5チームに残りました。出場632チーム中には有名国立大学の3年生チームもいたのですが、うちの1年生チームが勝てた。学生たちには「偏差値なんて関係ない」というマインド・チェンジが起こりました。 プレゼンテーションはパッションや熱意を伝えること。それは大学の中でも企業の中でも同じ。そんな情熱のかけ方は、アカデミックの先生たちとは違う面なのでしょうね。単に教えるだけでなく、アクティブにやっていくのが大事だと思います。 実務家教員の輩出は、企業にとっては人材流出とも捉えられかねません。企業側のメリットはどのように考えられますか。 自分の会社の人間が他の領域でも活躍しているというのは、企業側にとってメリットもあるのではないでしょうか。「人材輩出企業」のようなイメージですね。 もう一つは、外に出た人が仕事を生み出してくれるようになればいい。私も北大時代、産学の共同研究を通して企業にメリットを還元することを意識していました。そうした意味で行ったり来たりがないと、企業は人材を流出させるだけで意味がないと思ってしまいます。メリットと捉えるには実務家教員がこうしたマインドを持てるかどうかにかかっているのではないでしょうか。 「人材輩出企業」というイメージができると、企業側も優秀な学生を確保できるメリットがありそうですね。 これからは終身雇用がなくなり、この企業に入れば一生安泰と思う学生はほとんどいなくなります。逆に「この会社なら自分の力を高められる」というのが、今の学生に求められる会社像ではないでしょうか。 私自身、大学ではあまり細かく指導はせず、学生個人の考えを尊重しています。ただし、クライアントが求めていることや、課題の本質がずれたときは「違うんじゃないか」と指摘します。人材流出でなく「人材輩出企業」のイメージを鵜飼北見北見北見小木曽小木曽
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