TEEP NEWS LETTER Vol.09
3/4

ホテルでマーケティング担当者のお話を伺う地元の小学生向けに行ったホテル講座で、子どもの発言に耳を傾けるていたコンピューターの知識をアピールし、システム担当として雇用されました。そこでeコマースやファイナンスなども担当したところ、その実績を買われ、今度は国内ホテルの支配人にスカウトされました。 しかし、せっかくホスピタリティー産業に入ったのに、経理のプロとして接客と距離を置くことになったことと、自分のキャリアの後半生は若い人材育成に力を注いでいくべきではないのかと、40歳を手前にして自分を見つめ直したのです。 当時は「観光立国」推進を目指して大学にも観光系の学部が多くできており、その分野の教育を実践できる人材が求められていると感じていました。また、個人的にも子育てを通して人材育成や教育の重要性を考えるようになっていました。そこで、働きながら大学院に通い、MBAの取得を目指すと同時に、大学教員の公募などを見ながら転職の機会をうかがっていました。そして、ちょうど「実務家教員」としての募集枠があり、運よく採用していただけたという訳です。   人生の転機に自分のやりたいことは何かを再考し、一歩踏み出したという点では私も共通していますが、私が転職した時はまだ実務家教員の枠はありませんでした。時代は変わっていたのですね(笑)。実際に転職した後、実務家教員の特徴をどのように感じましたか。   国内の高等教育機関では、そもそもホテルビジネスというものが学問として確立していないと感じました。専門家が少なく、納得できる教科書も見つからないから自分で書いてしまおうなどと、ある意味やりやすかった面があります。授業の運営という面でも、これまでの人脈を生かして学外の実習などが積極的にできたのは、実務家教員の強みだと思います。 一方、アカデミックの業績づくりについては苦戦しています。大学からの評価はあくまで論文などの活字の業績。そこはどうしてもアカデミックの先生にはかなわない。実務家教員の公正な業績評価方法が構築されなければ、そもそも実務家教員を採用したのはなぜかという疑問や葛藤が生まれてしまいます。   アカデミック教員と実務家教員との差や違いをどう定義付け、知ってもらえるかは大きな課題ですね。   現場を知り、もまれてきた実務家ならではの視点は、必ず教育に生かせると思います。一方で、教員としてのキャリアが長くなると、現場の経験や知識が古くなってきてしまいます。そこで最新の知識などは、人から教えてもらわなければならない。その時に生かされるのが実務家時代の人脈だと感じています。 そうして試行錯誤しながら、産学連携やインターンシップなど、自分なりの専門領域を広げてきました。インターンシップにあたっては、学生が体験できる仕事は局所的ですから、ホテル全体のなかの業務の連続性や前後関係を考えるように指導しています。そうしなければ自分が行う仕事の意味が理解できず、モチベーションも上げられなくなってしまうからです。自分が配属された現場はもちろん、なるべく多くのセクションの従業員とコミュニケーションをとることによって、仕事の醍醐味ややりがいを感じてほしいと考えています。地域との橋渡し役も実務家教員の役割鵜飼鵜飼吉田吉田

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る