TEEP NEWS LETTER Vol.02
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キュラムを実施することとされています。 薬学教育モデル・コアカリキュラムには、災害医療に関する教育内容も示されていますが、すべての実務家が災害医療に関する知識や経験を十分に持っているわけではなく、今回の「進化型実務家教員養成プログラム」では、減災・医療コースにおいて、災害医療を指導できる実務家の養成を行う予定です。また、災害医療に関わる可能性のある薬学以外の実務家にも災害時における薬事支援の知識や技能について学ぶ機会を提供いたします。 高知県立大学には、全体で5割以上、看護学部、社会福祉学部、健康栄養学部に限れば約7割が保健・医療・福祉に関わる専門職者としての経験を有しており、質の高い専門教育を行うために必要不可欠な実務家教員として在職しています。日々進化する高度で専門的な知識や技術を教育に組み込みながら、次世代を担う専門職者を育てています。 その一方で、学部を越えた大学教育の基盤となる、人としての考え方・生き方とも言い換えることのできる知識や経験も、今日の社会では必要です。本学では、「域学共生」という理念を教育の柱の一つに置いています。「域学共生」とは、地「域」と大「学」が「共」に「生」きていくという考え方です。この理念に基づいて、すべての学生たちに地域での学びを必須とする「地域学実習Ⅰ」と「地域学実習Ⅱ」を2015年度から必修化しました。1学年310人の学生たちが地域で活動するのですから、それは並大抵のことではありません。その取り組みの核になるのが、域学共生コーディネーターです。地域と大学とをつなぐ存在です。 域学共生コーディネーターの仕事ぶりを見ていると、地域のこと、行政のこと、大学の教育がよくわかっている人物でなければこの職務は果たせないと思います。それは、言い換えれば、これらの間にある「段差」を埋める技能を有している「職人」であるということです。本学のコーディネーターの前職は高知県内の地方自治体の職員で、地域を回り、住民のニーズを聞き、事業を企画し、補助金や予算を獲得して、地域社会づくりに取り組んできたというキャリアを持っています。しかも、さらにその前職は私立大学の職員でした。本学は、実に幸運なことに、このような資質と経験を有するコーディネーターを得ることができたことで、学生たちの地域での学びの質を充実させることができています。彼は「実務家職員」で、豊かな現場経験が彼の中では理論化されており、それゆえに質の高い地域活動が提供できているのです。問題は、「職人」的な彼の企画力と教育力を、どう理論化し普遍化して、「教育技術」として大学の資源にすることができるかです。 多くの大学が地域での活動を大学教育に取り入れています。域学共生で「確かな学力」を身に付けた学生たちを見ると、地域との関わりの濃度が高いほど、卒業後に時間をおかずに社会に適応し活躍しています。専門職者としての実務をよく理解している学部教員と、域学共生を担う教職員とが協働すれば、より社会に近く、質の高い大学教育を提供できるはずです。それゆえに、進化型実務家教員養成プログラムに寄せる期待は大きくなっています。裏面へ続く「段差」を埋める域学共生コーディネーター域学共生で「確かな学力」を身に付ける清原泰治高知県立大学地域教育研究センター 教授「確かな学力」づくりに不可欠な域学共生コーディネーター

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