ば、技術の変化、自然環境の変化、人口構成の変化、都市構造の変化等があります。これらの変化は、新しいソーシャル・デザインと従来とは異なる解法が欠かせないため、企業、高等教育機関、自治体等のマネジメントは変質せざるを得ません。求められる人材も変質します。ゆえに、企業と大学に限らず、「あらゆるステークホルダーが協力して人材を育成する時代に変化!」しているのです。これが今生じていることの意味です。かかる時代、進化型実務家教員は、変化し続ける現場で混沌を楽しみ切り開く《野武士》とイメージが重なります。 最後に、進化型実務家教員の在り方を提案します。巻頭言で述べたように、既に多くの場所で実務家教員は活躍しています。大学に居る。社会に居る。企業に居る。NPOに居る。TEEPコンソーシアムの目的の一つは、新領域での解決力を磨き続ける「多職種連携PBL」で先進的な実務家教員のコンピテンシー養成にあります。ここで強調しておきたいのは、時代の変化に必要な実践に根差した人材育成をおこなうための進化型実務家教員を、産官学民連携して育成し輩出することの必然性です。例えば、「企業(行政、NPO)⇒TEEP⇒企業(行政、NPO)⇒大学⇒新規事業」サイクルで進化型実務家教員が輩出され、大学にも社会にも実務家教員がいて相互に連携した次代を担う人材育成を推進します。進化型実務家教員の社会実験はスタートを切ったばかりです。まずは、実証を重ね、0(Zero)から1(One)を生み出すため精一杯努力してまいります。 我が国での高等教育としての薬学教育は、明治6年東京大学薬学部の源流として第一大学区医学校製薬学科が開設されたことから始まりました。創成期から平成に至るまで、我が国の薬学教育は、欧米の薬学教育とは大きく異なり、新薬開発などの基礎研究に主眼が置かれてきましたが、臨床に関する教育は、平成に入るまでほとんど行われていませんでした。 医薬分業では、病院で医師が診察して処方箋を発行し、薬局において薬剤師は処方内容が適切であることを確認したのち、調剤して患者さんに医薬品を交付します。処方に疑義があれば、薬剤師は処方医に照会して疑義解消後でなければ調剤してはならないことが法律で定められており、医師の処方と薬剤師の調剤のそれぞれにおいて、専門家が職能を発揮します。欧米では中世から強制的な医薬分業が行われていましたが、我が国では、歴史的背景とともに、経済的利益とそれに伴う医師会の圧力等により、医薬分業は不完全でした。しかし、薬漬け医療などが社会問題となり、処方箋料引き上げや薬価差益減少といった経済的誘導も行われ、今日では多くの病院や診療所で院外処方が行われています。その結果、病院勤務薬剤師は、医療チームの一員として薬物療法での効果や副作用のモニタリングや処方提案など、臨床に業務がシフトしていき、薬局勤務薬剤師も在宅医療などへの積極的な関与が求められるようになりました。そして、薬学教育における臨床教育充実のため平成18年から薬学部の修業年限は6年間となりました。卒業後の進路は、臨床以外にも、製薬企業等での研究や、行政での公衆衛生関連業務など多岐にわたります。 大学設置基準等では、薬学部の専任教員の6分の1は病院や薬局で5年以上の経験を有する実務家教員とすることとされています。また、薬学生は病院や薬局での実務実習が必修であり、教育のための研修を受講し認定資格をもつ実習指導薬剤師が指導しています。教育内容は、薬学教育モデル・コアカリキュラムとして全国で統一されており、各大学では7割の時間はモデル・コアカリキュラムに示された内容を、3割は大学独自のカリ薬学における実務家と実務家教員ネットワーク型社会の網の目に居る進化型実務家教員制度改革が新たな領域での役割と学びを促してきた災害医療を指導できる実務家の養成も林 秀樹岐阜薬科大学実践社会薬学研究室 准教授
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